■声をかけ合える地域でのつながり
市内の全ての小中学校では、子どもの生活を知るためのアンケートを実施しています。ある小学校で実施したアンケートでは、「困った時に相談する人はいますか」「それは誰ですか」という設問に対して、「家族」や「友だち」以外に、多くの子どもたちが「その他」を選び、記述欄に「Yさん」の名前を書いていました。Yさんとは、毎朝その小学校の通学路で交通指導をしている地域の人です。後日、Yさんから次のようなお話を聞かせていただきました。
集団登校に遅れてきたAさんに「今日はどうしたの?」と聞くと、「昨日、お母さんの帰りを待っていたら寝るのが遅くなって、寝坊した」と返ってきました。また、表情のさえない日が続くBさんに「最近元気ないなあ」と声をかけると、「お父さんの仕事が早く見つかって、元気になってほしい…」と伝えてくれました。
子どもたち一人一人がさまざまな生活状況の中で、いろいろな思いを持っています。私はどの子も笑顔で学校生活を送ってほしい。だから必ず笑顔で「いってらっしゃい」と、送り出しているんです。
その一方で、私が体調不良でしばらく休んでいて、久しぶりに交通指導に立ったら、「おばちゃん、大丈夫やった?」と子どもたちから声をかけてくれたんです。私は温かい気持ちになりました。私も子どもたちから元気をもらい、支えてもらっているんです。
「僕のことを知ってくれている大人が近くにいる」
「私のことを気にかけてくれている子がいる」
そんな風に思える関係は、「自分が暮らすこの地域が好き」という思いにつながっていきます。
今回のあけぼのでは、地域での具体的な取り組みから、人と人とのつながりの大切さを実感し、「一人ではない」と感じられる地域づくりについて、一緒に考えたいと思います。
■人権コラム 子どもの貧困を考える
厚生労働省の報告によると、日本では17歳以下の子どもの貧困率は11.5%(2021年)であり、およそ9人に1人が相対的貧困状態にあるといわれています。
相対的貧困とは、その国の文化水準、生活水準と比較して、適正な水準で生活を営むことが困難な状態のことで、具体的には全世帯の所得の中央値の半分に満たない状態を指します。
相対的貧困状態にある家庭の中には、おなかいっぱいに食べることができない子どもや、おかずがなくご飯だけを食べているという子どももいます。また、家族の世話や介護をしたり、経済的な理由でクラブ活動や習い事、進学等を諦めたりする場合もあります。こうした子どもたちは、成長に必要なさまざまな経験や知識・学力を得る機会などを奪われてしまい、学校や社会で孤立してしまう傾向があるといわれています。
また、貧困は「当事者が我慢すべきこと」「自己責任であり恥ずべきこと」という社会的風潮があることから、SOSを発信しにくくなってしまい、より貧困が見えづらくなっているように思います。
さらに、このような状況は貧困から抜け出すことを難しくさせ、貧困が世代間で連鎖することにつながる一つの要因として危惧されます。
全ての子どもや保護者が孤立することなく、助けを求められる社会をつくっていくために、まずは貧困を個人の責任ではなく、社会全体の問題として考え、一人一人がその問題に対する見方や考え方を見直していく必要があるのではないでしょうか。
第36号
令和6年2月16日発行
問合せ:教委人権教育課
【電話】229-3253【FAX】229-3017
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