■津市人権施策基本方針を改訂しました
津市では、平成18年9月に「人権が尊重される津市をつくる条例」を制定し、平成19年3月に「人権尊重都市宣言」を行いました。また、平成20年7月には「津市人権施策基本方針」を策定し、これまで、あらゆる差別を許さない人権尊重のまちづくりを進め、市民の人権意識の高揚を図ってきました。
しかし、今日においては人権を取り巻く社会状況の変化や、国際化・情報化の進展などを背景に、人権課題は多様化・複雑化しており、貧困問題や性的指向および性自認の多様性に寛容な社会の実現など、新たに取り組むべき課題が顕在化しています。
このような人権を取り巻く社会状況の変化に伴い、これまでの基本方針の見直しや整理をするとともに、早急な対応および対応の強化を求められている「ハラスメント」「性的指向・性自認」「災害と人権」「貧困問題」「自殺問題」「北朝鮮当局による拉致問題」の6項目を、新たに位置付ける人権課題として追加するなど「津市人権施策基本方針」の改訂を、令和5年10月に行いました。
そこで、次のページでは追加した6項目の中から「性的指向・性自認」をテーマに取り上げ、性の多様性が認められ、全ての人が自分らしく生きられる社会について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
■コラム~マユミが教えてくれたこと
先日、SNSの人気動画を見ていると、かつて中学校で担任していたアユミ(仮名)がフォロワー数40万人を超える有名人になっていました。私はびっくりしてアユミに連絡をとると、友達と一緒に撮ったダンス動画が話題になったと言っていました。彼女は日本で生まれ育ったブラジル国籍の子で、ダンスの他にもポルトガル語で日本の食べ物や機能的なトイレなどを紹介していました。
フォロワー数にも驚きましたが、それ以上に驚いたのは、アユミがSNSでブラジルの名前で活動をしていることでした。なぜなら、かつて彼女は「ブラジル人だけど日本の名前で呼んでほしい」と言っていたからです。
アユミは中学生の時、私に「前の小学校でブラジル人ということが理由でいじめを受けて転校することになり、そこからブラジルの名前を名乗ることができなくなった」と話をしてくれました。そのような彼女の思いに触れ、私は「外国につながる子どもたちが、どんな気持ちで毎日学校生活を送っているのか知りたい」と思うようになり、子どもやその保護者とたくさん話をするようになりました。そして、彼らが日本で生活していく中で、周りの偏見や思い込みなどによって嫌な思いをたくさんしてきていることが分かってきました。私も以前は、外国につながる子どもたちは勉強が好きではない子どもが多いと思っていましたが、実はそうではなく、分からない日本語が出てきたり内容が分からなかったりしたときに、親や周りの子に聞ける環境がなかったことで意欲的になれなかったのだと分かり、私の中にも偏った見方があったと気付かされました。
私は、アユミが自分や自分の国に誇りを持って生きていけるようになってほしいという思いで関わりました。そうする中で私だけでなく周りの子の彼女への見方も少しずつ変わっていき、アユミ自身も意欲的に学校生活を送るようになりました。しかし中学校卒業までにアユミがブラジルの名前を名乗ることはありせんでした。
現在はSNSでブラジルの名前を使うだけではなく、高校の友達にポルトガル語を教えたりブラジルの食べ物を紹介したりもしています。アユミがブラジルのことも日本のことも大事にし、ブラジルと日本の架け橋になっているように感じました。そのことを彼女に伝えると「昔、先生が『自分の名前やブラジルのことを大事にしよう』と一緒に考えてくれたから、それが今の自分につながっていると思う」と話してくれました。自分のルーツや国籍・さまざまな個性も含めて、誰もが自分自身のことを大切に思える社会を作っていくために、自分には何ができるのか、これからも考えていきたいと思います。
令和6年3月16日発行
第18号
問合せ:人権課
【電話】229-3165【FAX】229-3366
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