今回は、津家庭教育研究会の松原利子さんと山下裕子さんからお話を伺いました。同研究会では、家庭での大人の日常的な姿を通して子どもの自己肯定感や豊かな人間性を育てることを目指して、学習会や講演会、子育てに関する相談などの活動を行っています。
●どのようなことを思いながら子育てをしていましたか。
私も、この学習会の参加者でした。子育てをしているとき、友だちに連れられて参加したのですが、始めは講師の先生に「そんなのおかしい」と文句ばかり言っていました。今思えば、「子どもは大人の姿を見て育っていくんですよ」と言われると、子どもに「ああしなさい、こうしなさい」と言い聞かせてばかりいる自分にバツをつけられているようで、私は駄目な親だと感じて苦しかったんだと思います。
そんな自分を素直に認められなくて、私の子育ては間違ってないと言い張っていたのだと思います。(松原さん)
●そんな自分が変わったのはなぜですか。
高校生になった子どもが、大やけどをして入院したことがありました。「子どもの命があってよかった。生きていてくれてよかった」と思った時、それまで子どもが何度か、「ごめんなさい」と書いた手紙をくれたのを思い出しました。それまで私は、子どもに言い聞かせてばかりで、子どもの話を聞こうとしてこなかったと気付いたんです。子どもはそんな私の姿を見て「ごめんなさい」と言っていたのかもしれません。
「子どもの話をもっと聞こう」「自分を少し変えよう」と思い、少しずつそうしていくと、私の子どもに対する見方が変わり、自分自身が解放されたように感じました。そんな自分だったから、親が子どもに自分の思いを押しつけてしまったり、そんな自分を変えたいと思っていてもなかなか実践できなかったりする気持ちも分かるような気がします。(松原さん)
●活動の中で大切にされていることを教えてください。
大人が変われば子どもが変わると言いますが、大人が子どもとの関わり方を少し変えてみると、子どもとの関係が変わり始めます。子どもの方は変わっていなくても、私たち大人の見方が変わったことで、子どもが変わったように感じるのではないでしょうか。だから、私たちは子育てをしている人の話をじっくり聞いて、子どもとの関わり方を一緒に考えていきたいと思っています。
参加された人からは、「自分の考えを押しつけるのではなく、子どもの気持ちを丁寧に聞くことを大切にしたいと思った」「子育てや家庭での教育は妻がするものだと思っていた自分の姿は、子どもの目にどう映っていたのかと考えさせられた」などの感想を聞かせてもらうことがあります。これからも、子どもの気持ちに寄り添い、子どもから教えてもらうことの大切さを発信していくとともに、私自身がそういう生き方をしていきたいと思います。(山下さん)
○取材者の感想
中千代さん、木原さん、松原さん、山下さんのお話から、本当に子どもの話を聞こうとしているか、自分の価値観を押しつけていないか、偏った見方で自分の周りに壁をつくっていないか、考えるきっかけをいただいたと思います。子どもを取り巻く大人の一人として、自分自身の生き方を振り返ることを大事にしていきたいと思います。
第37号
令和6年7月16日発行
問合せ:教委人権教育課
【電話】229-3253【FAX】229-3017
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