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【特集】Beyond the area こもの×いなべ 定住自立圏構想(2)

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三重県菰野町

定住自立圏の形成で見出す菰野町の活路
菰野町が菰野町として存続していくために

人口減少社会へ対抗する手段として三重県、菰野町、いなべ市、3者で協議を重ね、締結に至った定住自立圏形成協定。では今後、この協定を生かし、どのようにして魅力的な地域を形成していけばいいのでしょうか。三重県、菰野町、いなべ市、3者の担当者に狙いと展望を伺いました。

■県内各地で形成される連携
令和5年11月時点で全国で140の市が中心市として宣言しており、130の地域で既に定住自立圏が形成されています。三重県内で定住自立圏を形成している地域は現在、菰野町といなべ市以外にも3箇所あります。松阪市、伊勢市、伊賀市をそれぞれ中心市として定住自立圏を形成し、地域の特色を生かしながらさまざまな分野で連携を進めています。特に伊賀市を中心市とする伊賀・山城南・東大和定住自立圏は全国的にも珍しい3つの府県に属する市町村が県域を超えて定住自立圏を形成している事例であり、定住自立圏の形成がこれまでの枠組にとらわれない新たな地域圏を形作る構想であることを示す好例といえます。定住自立圏の形成は、あくまで各自治体の意志と合意により進められていますが、三重県も地域づくり推進課が窓口となって各自治体へのサポートなどに携わり、3者が連携して協定締結から具体的な取り組みに至るまで事業の推進を行っています。

※三重県内の定住自立圏形成状況の図は本紙P.4をご覧ください。

■多岐にわたる連携を模索する
定住自立圏の形成によって連携できる内容はさまざまな分野にわたりますが、菰野町といなべ市では、現時点で医療、福祉、産業振興、環境、公共交通といった分野での連携を想定しています。例えば、環境の分野では、平成3年に建設されてから老朽化や維持管理コストの増大が懸念されている町清掃センターの機能強化、コスト削減を図るため、同様の課題を有するいなべ市と統合しての清掃センター建設を検討しています。このように広域で事業を実施することでスケールメリットを生かすこともできます。その他にも医療の分野では両市町に存在する三重北医療センターの運営支援、産業振興の分野ではインバウンドを含む広域での観光誘客や商品開発などでの連携を想定しています。
また、圏域マネジメント能力の強化として人材交流や合同職員研修会の開催などで職員の資質を向上させる取り組みも想定しています。

▽定住自立圏を形成することでできる3つの施策例
〔1.生活機能の強化〕
医療:三重北医療センターの運営支援
福祉:子育て支援体制の充実
産業振興:観光振興による広域での誘客や観光商品の開発
環境:清掃センターの統合建設の検討

〔2.結びつきやネットワークの強化〕
地域公共交通:
・地域公共交通の利便性向上および利用促進
・周辺地域への快適な移動

〔3.圏域マネジメント能力の強化〕
圏域内市町の職員等の交流
・合同職員研修等の実施
・人材育成推進のための交流

■行政ニーズに対応するために
多様化が叫ばれる現代において行政に求められるニーズも複雑化・多様化しています。そのような現状に対し、活用できる制度として総務省が推進する地域活性化起業人制度があります。この制度は、三大都市圏から企業人を招致し、民間企業で培ったノウハウや知見を生かして行政サービスの拡充や事業推進に取り組むもので、今回、定住自立圏を形成した菰野町も地域活性化起業人制度を活用できるようになりました。企業人の力を借りることで、さまざまな行政ニーズに応えることができると期待されています。これらの定住自立圏の形成による事業推進や施設整備、そして地域活性化起業人制度に関する経費などには国の特別交付税措置による財政支援や交付金の採択に一定程度の配慮がなされることも町のメリットとして捉えることができます。
菰野町といなべ市との定住自立圏の形成はまだ始まったばかり。今後、いかにして住みよく、三大都市圏から見ても魅力的な地域として映るようになるか、今後も検討を進めていきます。

◆三重県 地域連携・交通部 地域づくり推進課 地域企画班 主事 脇(わき)友子(ともこ)さん
三重県内での定住自立圏の形成は、それぞれの地域の特徴や地理的特性を生かしながら多種多様なかたちで推進されています。三重県としては、中心市の皆さんにお集まりいただいて担当者会議を開催したり、定住自立圏としての計画や共生ビジョンを策定するための助言を行ったりといった部分で支援を行っています。地方に安心して暮らし、三大都市圏から見ても三重県が魅力的で住みやすい地域となるよう定住自立圏を形成する市町を今後も必要に応じて、サポートしていきたいと考えています。

◆いなべ市 企画部政策課 課長 小谷(こたに)直仁(なおひと)さん
菰野町といなべ市で新たな可能性を見出す長い歴史をもつ湯の山温泉など観光地として学ぶべき部分が菰野町には多くあると感じています。自然に恵まれている立地は同じなので、協定締結を契機に広い地域で「にぎわい」を創出できれば、新しい可能性が見出せると考えています。そのためにまずは共通の課題を探り、行政ニーズに見合った解決策を打ち出していかなければなりません。住民アンケートの結果などから第1に医療、第2に公共交通や産業振興、環境といった部分への課題が既に見えているので、広い視点をもって両市町の住民が少しでも暮らしやすくなるよう連携を進めていきます。

◆菰野町 企画情報課政策推進室 室長 諸岡(もろおか)伸也(しんや)
広域連携の相乗効果で暮らしやすさに繋げる隣町であるいなべ市ですが、話題性や事業展開などの部分で菰野町が学ぶべき部分も多く存在しています。行政上の区分けにより、これまであまり自治体同士で関わりがありませんでしたが、今後、交流を深めつつ連携することで行政サービスや観光施策などを相乗効果で高めていけるはずです。定住自立圏を形成することで利用できる制度や財政的な措置も多くあるので、それらをうまく活用しながら、これまでにない政策を展開していければと考えています。

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