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三重大学 海女研究センターだより vol.12

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三重県鳥羽市

謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。三重大学水産実験所が鳥羽市小浜町に移転してから3年を迎えようとしています。その間、鳥羽のみなさんから多くのご協力・ご支援をいただき、当所の研究活動は順調に広がりつつあります。本稿では、その中から「ブルーカーボン」に関する研究活動を紹介いたします。
ブルーカーボンは、藻場や浅場などの海洋生態系に取り込まれた炭素のことで、海草・海藻が広がる藻場、湿地、干潟やマングローブ林といった海洋生態系は、特にブルーカーボン生態系と呼ばれます。これらは大気中の二酸化炭素を取り込み、枯死したあとも海底に埋まる、つまり二酸化炭素を海の中に溜め込んだままにすることから、地球温暖化の対策(大気中の二酸化炭素を減らす)に貢献するものとして期待されています。最近では、主に海草・海藻を保全してブルーカーボン生態系を増やすと、それが吸収してくれる二酸化炭素を売ったり買ったりすることができます(カーボンクレジットと言います)。海域の環境保全が経済面でも評価されるのは、継続的な活動を維持する上でも重要なことです。
さて、鳥羽の海でブルーカーボン生態系(海藻・海草)の状況はどうでしょうか?磯焼けが徐々に広がってきている、という話も聞きますし、一方で海藻の保全活動に力を入れている海域もあります。広い鳥羽の海の中を簡単に見られると状況がわかるのですが、そうは問屋が卸さない。海の中を測ったり調べたりするのはとても大変で、ブルーカーボン生態系の計測も例外ではありません。生えている海藻の量を広い範囲で詳細に把握できれば、保全対策にも活用でき、カーボンクレジット(藻場の価値)も評価しやすくなります。
本所では鳥羽商船高等専門学校が主導している藻場自動計測装置の研究開発プロジェクトに参加しており、鳥羽市水産研究所とも一緒に、新しい計測技術の開発に取り組んでいます。この装置は船から海底を撮影して写真をたくさん集める、簡易的な水中カメラのようなものですが、集めた海底の写真に対して人工知能や画像解析技術を使うことで、海藻の種類や量を正確に、かつ手軽に計測できるようになります。本所では主に海藻に含まれる炭素の量を調べる研究を担当しており、正確な計測装置を実現できるよう、潜水調査やドローン調査をおこなっています。鳥羽発のブルーカーボン計測技術が、日本だけでなく世界中で使われるようになることを目指しています。みなさんも、身近な海にあるブルーカーボン生態系にぜひ注目してみてください。
(准教授 岡辺拓巳(おかべたくみ))

問合せ:三重大学海女研究センター(三重大学人文学部総務担当)
【電話】059-231-9195

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