~カイゴロモの話~
スガイという巻貝。磯もののひとつとして食べたことがある人もいるだろう。磯の岩の上にいるのですぐに見つけることができる。そのスガイの表面は緑色の藻で覆われており、スガイの特徴のように見えるかもしれない。その藻にはカイゴロモという名前がついている。阿寒湖のマリモと比較的近い仲間の藻類である。カイゴロモは岩盤などには付かず、スガイの貝殻にしか付かないとされてきた。
最近の研究でスガイ以外にもホソウミニナやウミニナなどいくつかの潮間帯巻貝の貝殻にも着生が認められたが、依然として天然岩盤などの上からは発見されていない。カイゴロモの近縁種のヒメフカミドリシオグサは貝類には付かず、岩盤に付着するので、カイゴロモの特殊性がわかるだろう。また、砂の多い海岸のスガイよりも岩場に住むスガイにカイゴロモは多く付着する傾向があり、スガイは砂地では熱さを避けて砂に潜ることができるが、岩場ではそうできないからではないかと考えられている。
また屋内飼育実験で貝殻内部の温度を測ると、カイゴロモが生えているスガイのほうが、温度が上がりにくいという結果が出ている。これらのことからスガイにとって貝殻表面のカイゴロモは、熱ストレスを下げる役割を持っているのではないかと考えられている。カイゴロモにとっても、スガイが適所に移動してくれることによって厳しい生育環境である潮間帯上部において安定した生育場を享受している可能性があるということらしい。ただの藻が生えた貝、貝に生えた藻というわけではないということだ。
問合せ:水産研究所
【電話】25-3316
<この記事についてアンケートにご協力ください。>