■伊根中学校スクールカウンセラー 引野 李那
“眠り”は人が生きていくために欠かせないものですが、大人と子どもでは“眠り”の役割に違いがあります。大人にとっての“眠り”は頭と身体を休めるためですが、子どもの“眠り”は成長過程の脳と身体を“発達”させるために必要なものです。子どもの脳では寝ている間に記憶された情報の整理をするだけでなく、身体を育てる“成長ホルモン”も分泌されます。しっかり寝ることはしっかりとした心身を作ります。“寝る子は育つ”と言われる所以です。脳が成熟する思春期までの時期は、大人に比べて長時間の睡眠が必要です。子どもの頃から、しっかり寝る習慣を身に付けることが大切です。
最近では、保護者の生活スタイルにあわせて夜更かしをしている子どもが増えています。様々な原因はあるでしょうが、子どもを夜遅くまで起こしておくことは避けるべきです。
夜更かしをしている子の多くは、夜遅くまで明るい場所にいます。本来は暗くなっているはずの時間に光を浴びてしまうと、軽い“時差ぼけ”のような状態になります。昼寝は夜の睡眠の代わりをすることはできません。
また、睡眠や生活習慣の乱れが子どもの成長や発達に良くない影響を及ぼすことが分かっています。寝不足や夜型の生活が続くと、感情・行動の調整力が低下し、その結果、成績が下がる、落ち込みやイラつきが目立ち、不注意や衝動性が強くなるなどします。さらに幼い子どもでは、睡眠リズムが安定せず、“遅寝・遅起きモード”になってしまいます。
また睡眠は、無駄なエネルギー消費や脳のオーバーヒートを防ぎ、記憶力・能率の改善を図ります。正常な睡眠の基本は、適切な量・質・リズムが保たれていることにあります。
夜の睡眠は、(1)恒常性維持(昼間に眠気をもたらす物質が蓄積され、その量が多くなることで眠くなる)、(2)体内時計(夜になると深部体温が下がり眠くなる)、(3)情動機構(何かあると眠れない)の影響を強く受けています。
基本的に、朝光を浴びることで、12~13時間無理なく活動することができ、約14時間経過すると自然に眠気が生じるようになります。
子どもの睡眠障害を疑う症状としては、
▽睡眠不足
・平日の朝、自分で目覚めない/起きられない
・平日の朝、起床時に不機嫌で、親と喧嘩が絶えない
・平日の朝、保育園/幼稚園/学校への行き渋りがある
・遅刻/欠席が増える/多い
・平日の朝食が食べられない/食べる時間の余裕がない
▽日中の活動に支障がある(睡眠障害)
・日中(授業中)に眠たそう/居眠りする
・日中に機嫌が悪い/喧嘩しやすい
・不注意なミスが多い/失敗が多い/ケガが多い
・日中にボーっとしている/不活発
・保健室へよく行く
・休日は昼近くまで寝ている
▽体内時計の乱れ
・午前中は元気がない/調子が悪い(腹痛・頭痛・めまい)
・昼過ぎ/夕方から/夜になると元気になる/体調が良くなる/慢性便秘
質の良い睡眠をとるためには、規則正しく三度の食事をとり、規則的な運動習慣を付けることが大切になります。刺激物は避け、寝る前にリラックス環境をつくりましょう。具体的には、寝る前に明るい所に行かない、スマートフォン・携帯電話・タブレットなどを使用しないことが望ましいです。寝る1時間前には、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かることもよいでしょう。また、同じ時刻に毎日起床し、目が覚めたら日光を取り入れることで体内時計を整えましょう。休日も起床時刻は平日と2時間以上ずれないようにし、夕方以降の仮眠はしないようにしましょう。
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