■第33回紫式部文学賞受賞者コラム
▽縦書きの文字
角野(かどの)栄子(えいこ)
四歳だった娘を連れて、イタリアを旅したことがあった。幼い子どもには海外旅行はストレスがたまる。それで、公園を見つけて思いっきり遊ばせることにした。
イタリアのどこだったか?もう五十年も前のことなので定かではないけど、小さな公園で娘は喜々として駆け回り、虫を見つけては木陰にいる私に見せにくる。すると、そばに座っていた初老のイタリア紳士が、「あなたの娘は、『虫めづる姫君』だね」といった。『虫めづる姫君』だけ、はっきりとした日本語だった。からっと晴れたイタリアの青い空の下で、平安時代の言葉を聞くとは思わなかった。とっさのことに、返す言葉に戸惑って、笑い顔で誤魔化してしまった。
大学ではアメリカ文学専攻だったので、日本の古典の知識は教科書程度しかなかった。でも、そんなことなど気にしないで、紳士と話をすればよかったと、遠い昔の出来事を小さな棘のように思い出す。
この度の「紫式部文学賞」のお知らせを頂いたとき、すぐにこのイタリアでの記憶が蘇った。そして、高校時代、古典の授業で先生から暗記するように言われた作品の数々を思い出した。「平家物語」「徒然草」、もちろん「源氏物語」も。冒頭の部分、ごくごくわずかだが、今でも少しは覚えている。思い出してつぶやいてみた。
いずれの御時にか、女御、更衣あまたさぶらひ給ひける中に、…
すると、言葉が一本の糸のように繋がって、すーっと体に入ってくる。その心地よさに驚き、あらためて日本語って縦書きの言葉なのだ、と感じた。音の響きもリズムも、上から下への流れから生まれている。
この頃では、私もパソコンを使うようになった。便利で、ありがたいけど、なにかイライラする。画面に表示される文章は横書きで、読んでも情報がなかなか頭に入ってこない。世の中はそうなってしまったから、大人しく受け入れざるを得ない。そう思いながら、少し気がかりにもなる。だって、日本語はもともと水の流れのような縦書きなのだから。この原稿をパソコンで清書しながら、私はこれからの日本語のことを心配している。
問合せ:文化スポーツ課
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生活習慣病を早期発見・治療するためには、定期的な健(検)診が重要です。基本的には年に1回医療機関などで受けましょう。
また、健(検)診を受けた後は結果を確認しましょう。早期に対応・治療をすれば改善・治癒する可能性があるため、早めに対処することが重要です。
▽特に気をつけたい糖尿病!
糖尿病は、血液中のブドウ糖の濃度(血糖値)が高くなりすぎる病気です。この病気の恐さは、自覚症状のないまま進行することで、心臓病や脳卒中のリスクも高まります。
▽痩せていても要注意!
肥満も糖尿病のリスクを高めますが、痩せていても糖尿病になりやすい人がいます。肥満ではない人でも注意が必要です。
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食べ過ぎない・お酒を飲み過ぎない、運動をする等の生活習慣の改善によって糖尿病を発症する手前で防ぐ1次予防、発症しても血糖値を良好にコントロールして健康に生活する2次予防、さらに合併症の発症をくい止める3次予防がいずれも重要です。
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問合せ:健康づくり推進課
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