■汗の話
中島整形外科 中島慎一郎医師
汗とは、哺乳類が皮膚の汗腺から分泌する液体のことです。汗をかくのは哺乳類だけです。汗の主成分は水ですが、塩分やミネラル、乳酸塩、尿素なども含まれています。汗は体温調節のために重要な役割を果たしています。体温が上がると、脳の視床下部が汗腺に指令を出して、汗をかくようにします。汗が皮膚表面から蒸発するときに、気化熱を奪って体を冷やします。ヒトは水状の汗を分泌する汗腺が全身に発達していますが、ヒトのような汗を出すしくみがない犬は、舌を出しながら息を激しくして、よだれの蒸発で体温を下げます。また、汗は感情やストレスによっても影響されます。緊張や興奮したときには、手のひらや足の裏などで精神性発汗と呼ばれる汗が出ます。
汗はヒトの進化にも関係しています。ヒトはサルから進化する過程で、体毛が退化し、発汗能力が発達しました。これにより、長時間の運動や高温環境にも耐えられるようになりました。ヒトはマラソンなどの長距離走を得意とする数少ない動物の一つです。しかし、発汗によって水分や塩分なども失われるため、補給する必要があります。熱中症が疑われる時の対策として、水分と一緒に塩分も補給することが重要です。
汗は体内の有害物質や重金属なども排出することがあります。サウナや運動で汗をかくことには、デトックス効果があるという説もありますが、科学的な根拠は十分ではありません。また、汗はニオイの原因にもなります。汗自体は無臭ですが、皮膚上の細菌によって分解されると、アンモニアや酢酸などの臭い成分が発生します。特にワキや足などの部位では、アポクリン腺という特殊な汗腺から出る汗がニオイの元になります。
汗は私たちの健康や生活に密接に関わっています。適度な発汗は身体に良いですが、過度な発汗や不快な発汗は注意が必要です。
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