■災害を経験したからこそわかる避難の大切さを伝えたい
令和5年8月14日、台風第7号による猛烈な雨が本市を襲い、大江町波美では、24時間降雨量378mmを記録しました。そして、大雨から発生した多くの土砂災害は、住家や田畑に大きな被害をもたらしました。
今月号では、幾度の災害を経験しつつも大江地域で暮らし続ける夫妻と、その夫妻を支援する介護支援専門員(ケアマネジャー)を紹介します。降水量が多くなる出水期を前に、改めてあなたとあなたの大切な人の命を守るための避難行動について考えてみませんか。
○身体機能が低下した今避難に不安が…
大江地域に暮らす松尾さん夫妻は、平成16年10月台風の経験をこう振り返ります。
「だんだん家に水が入ってきて、逃げないとまずいかもしれんと思い、屋根から隣家へつながる道へ飛び移って避難しました。当時から20年が過ぎた今はもう88歳、足が動かしづらくなって、自分たちだけで安全な場所まで避難するのは難しいです」と話します。
昨年8月の台風の際、松尾さん夫妻は、ともに暮らす家族の車で避難所まで避難し、安心して過ごすことができました。避難を前向きに考えるようになったのは、避難訓練に参加した際、避難所や地域の人たちの協力があることに安心感を持ったからだと言います。
○安全に、安心して避難所で過ごしたい
2人と暮らす娘のAさんはこれまでの経験を踏まえ、「雨が長引くと、いち早く道路冠水し、家の周辺は孤立してしまいます。停電などの予期せぬ事態もあるので、3人が自宅に残って過ごすのは危険なんです。両親もかなり高齢になり、思うように動けないこともあるので今まで以上に心配です。だからこそ、早めの避難が大切です」と訴えます。
また、避難所への避難について、「両親と避難している避難所にはベッドがあって、サポートしてくださる職員さんもいます。みんなと一緒に過ごせる場所で、安全に避難ができます」と話します。
◆「個別避難計画」とは??
高齢や障害により自力での避難が困難な人を対象に、個々の状況に応じた具体的な避難支援の方法を定めた計画のことをいいます。この計画は、市の防災・福祉部局がケアマネジャーなどの福祉専門職と本人、家族、地域の支援者などが一緒に考えて作成します。
松尾さん夫妻のプランでは、杖や常備薬などの持ち出し品リストや、家に家族がいない場合の避難所への移送手段、避難所で必要となる福祉用具などを決めています。
○安心・安全に避難するために松尾さんの個別避難計画(抜粋)
1 避難スイッチと避難方法
「警戒レベル3高齢者等避難発令」で避難
(1)家族在宅時は、家族と自家用車で避難所へ
(2)家族不在時は、移送を支援する人と福祉車両で避難所へ
2 持ち出し品リスト
常備薬・飲み物・食べ物・杖を持って避難
3 避難所での支援について
移動時には見守りや介助が必要であるということ…
■作った避難計画を試してその都度、見直すことが大切
介護支援専門員 山田亜紀(やまだあき)さん
○自身の被災経験を生かして支援者として思うこと
山田さんが、初めて大きな災害に遭ったのは、平成16年10月台風です。
「ご飯だけはもって逃げろ」
義父から言われ、言われるがまま子どもと炊飯ジャーに入ったご飯を抱えて避難しました。そんな経験がありつつ、介護支援専門員として勤務してきた経験からこう話します。
「大江地域の人は、災害の経験が多いから、自分の身を守るための知識が備わっている人が多いと思います。加えて、近年は、行政と福祉、地域が連携して個別避難計画の作成に取り組むことで、みんなで助け合って逃げるための体制が構築されつつあると思うんです」と、変化を感じています。
しかし、計画を作って終わりではないと山田さんは言います。
「いざという時は、たとえ空振りに終わっても、計画に沿って避難する。その時にまた、避難手段やタイミング、持ち物リストに改善点が見つかれば、その都度、みんなで計画を見直していくことが大切です」
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