◆職人に聞く(2)
2か所目は、鍋島御庭焼を訪問し、市川光春さんと、その技を受け継ぐ小野麻衣子さんに話を聞いてきました。
▽市川光春(こうしゅん)さん(73歳)
(鍋島御庭(おにわ)焼)
20歳から鍋島御庭焼の作成に携わり、自身が制作した焼き物と鍋島焼のPRのため関東などで個展を開いています。
Q.仕事を始めたきっかけと仕事の内容は何ですか
鍋島御庭焼は、1675年から350年続く、鍋島藩御用窯唯一の直系窯元で、この家に生まれたことを宿命と感じ、伝統を守るために後を継ぎました。
仕事は『濃(だ)み』と呼ばれるもので、素地(きじ)に線を描き、輪郭を描いた中を、大きい筆を使って塗り絵のように塗っていく作業です。この濃みは、昔は女性の役割とされていて、私はこの道50年目です。また、東京などで個展を開いていて、その際は作品を紹介するために上京します。このことは大きな楽しみのひとつです。
Q.仕事のやりがいは何ですか
仕事を覚えるのは大変でしたが、作品が一つ一つ仕上がり、お客さんが手に取り眺め、さらに購入してもらい、毎日使ってもらえることがうれしいです。
自分が死んでも、自分が生み出した作品が永遠に残っていくことに幸せを感じます。
Q.ものづくりの魅力を教えてください
焼き物を通して歴史を学ぶことができます。また、たくさんの人と関わりを持つことができることも、生きがいにつながっています。
Q.今の目標は何ですか
あと2年で大川内山に藩窯ができて350年になります。伊万里焼をより多くの人たちに知ってもらうための活動などに取り組んでいきたいと思っています。
Q.元気の秘訣(ひけつ)は何ですか
家族みんなの分の弁当を作ることです。孫から「おいしい」と言ってもらえることがとてもうれしくて、孫から元気をもらっています。
Q.子どもたちにメッセージをお願いします
伊万里市は焼き物を作っている人が多いです。多くの子どもたちに焼き物を知ってもらい、ものづくりに関わる仕事をしてほしいです。
▽光春さんから鍋島御庭焼を受け継いでいる小野麻衣子さんに話を聞きました。
Q.伝統を受け継ぐきっかけは何ですか
この仕事以外は、考えていませんでした。高校生のときには「自分で自分の作品を作る」と決めていました。
Q.仕事のやりがいは何ですか
焼き物は焼くとき以外は常に自分の手元にあります。完成するのが楽しみで、窯に入れて色がきれいになったのを見ると、とてもうれしくなります。
Q.焼き物の魅力を教えてください
焼き物はちょっとしたことでも割れやすい繊細なものです。人に接するように、心を込めて大切に扱うことが重要です。
Q.今後の目標は何ですか
絵付けの技術をもっと向上させていきたいです。
Q.子どもたちにメッセージをお願いします
機械の発達で人の手を使う仕事が減っていると感じています。長い時間をかけて身につけた『技』の魅力を知ってほしいです。
◆職人に聞く(3)
3か所目は、池田畳店を訪問し、池田德治さんと後継者の英和さんに話を聞きました。
▽池田德治(とくじ)さん(77歳)
(池田畳店)
祖父の代から続いている池田畳店を3代目として引き継ぎ、現在も弟や息子と畳作りに携わっています。
Q.仕事を始めたきっかけは何ですか
初代の祖父と、2代目の父から継ぐことを期待され、自身もやる気になりました。
Q.仕事のやりがいは何ですか
丹精込めて作り上げた畳を納品し、お客さんに喜んでもらえたときがうれしいです。
Q.ものづくりの魅力を教えてください
畳が出来上がり出来栄えがよかったときに、特にものづくりの魅力を感じますし、とても幸せな気持ちになります。
Q.今の目標は何ですか
今年いっぱいで息子にすべてを引き継ぎたいと考えています。息子にしっかりと引き継ぐことが今の目標です。
Q.畳文化が衰退しつつありますが、今後どのように継承していきたいと考えていますか
古い家には、まだ畳が残っているので、それを守りたいです。新築の家では、カビが少ない和紙の畳を敷くことが多くなりました。今の需要とこれまでの伝統を共存させていくことで畳文化を残していけたらと思います。
Q.子どもたちにメッセージをお願いします
ものづくりはやってみたらおもしろいです。興味があればぜひ挑戦してほしいです。
▽德治さんの後継者の池田英和さんに話を聞きました。
Q.この仕事をするようになったきっかけは何ですか
やりたいことが見つからなかったときに、父から「畳をしてみないか」と誘われたことがきっかけです。3年間修行をしたのちに、父の元で仕事を始めました。続けるうちに「楽しい」と思うようになり、きついこともありましたが、めげずに取り組んだおかげで今の自分があるのだと思っています。
Q.仕事のやりがいは何ですか
畳を敷きに行ったときに、お客さんから「イグサの匂いがいいね」などと言葉をかけてもらったときにやりがいを感じます。
Q.今後の目標は何ですか
畳は少なくなっていますが、日本文化として根付いてきた畳の伝統をそのまま伝えていきたいです。子どもたちに「畳は良い」と思ってもらえるように、同業者などとも協力しながら、畳の良さを伝えていく活動を行っていきたいと考えています。
Q.子どもたちにメッセージをお願いします
仕事を楽しみ『人のために働く職人』になってほしいと思います。
■レポーター体験を終えて
生涯現役でものづくりをしている職人から話を聞き、単にものを作るだけではなく、伝統を守りつつ後世に引き継ぐための工夫などが行われていることがわかりました。
また、ものづくりを通して人と人とのつながりが生まれることを知りました。お客さんに喜んでもらえるようにと作品を作り上げる職人の匠の技に驚かされ、改めてものづくりの魅力を感じることができました。今回感じたことを私たち若い世代にも伝えていきたいと思いました。
私たちはこれから、高校や大学に進学したり就職したりするなど、たくさんのことを経験していきます。そこにはきっと困難なこともありますが、立ち向かっていかなければいけません。
職人のように『人のために働き、努力することをあきらめない』大人になりたいです。職人の皆さん、私たちのインタビューに快く答えていただきありがとうございました。皆さんの想いを忘れずにこれからもがんばっていきます。
問合先:長寿社会課高齢福祉・介護認定係
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