夏の暑い日や雪の降る寒い日、土砂降りの雨などから私たちを守ってくれている『我が家』。我が家には、皆さんそれぞれに家族や大切な人たちと過ごした思い出があると思います。
そのような思い出を一緒に作ってきた我が家に、この先どんな未来が待っているのでしょうか。我が家の未来を決めるのは、所有者の皆さんです。我が家が空き家になる前に、家族と一緒に大切な我が家のこれからを考えましょう。
■現在、家はだれのもの
我が家を空き家にしないために、これからの行動を考えるにあたって、まずは我が家の所有者を知る必要があります。親の代から住んでいる家の場合には、相続登記が完了していない場合があります。相続登記が完了していないと、いざ売却や譲渡したいと考えても、手続きが困難になり、結果として我が家の将来の選択肢を減らすことになります。
■相続登記の義務化
4月1日から相続登記の申請が義務化されました。これは、所有者が分からない土地が増え続けていることから、その解消に向けてルールが変更されたものです。このため、相続で不動産を取得した人は、不動産を取得した日から3年以内に相続登記の手続きを行う必要があります。
また、過去に相続していた不動産の相続登記が完了していない場合は、手続きが必要で、違反した場合は罰則の対象です。相続登記をしていないことで売却や譲渡の妨げになることがないよう忘れずに手続きをしましょう。我が家の進路を決める前に、まずは登記簿などで現在の所有者を確認しましょう。
■我が家の進路
所有者が住まなくなった家の進路は、(1)家族が利用(2)賃貸(3)売却(4)譲渡(5)解体などがあり、次のような出来事を想定して、事前に我が家の進路を家族で決めておくと、いざという時にスムーズに進めることができます。
▽所有者が死亡
死亡と同時に相続が開始されます。この場合、相続後に事前に家族全員で決めていた選択を実行することになります。
▽転居
転居など、所有者が自らの意思で住まなくなった場合は、我が家が空き家のままにならないよう早めに家族で決めていた選択を実行しましょう。
▽入院・施設入所
認知症や事故などで所有者との意思疎通ができなくなると、たとえ実子であっても所有権の移転ができなくなります。そうなると、事前に進路を決めていてもそのとおりに実行できず、相続が発生するまでは、維持管理をすることしかできません。このような場合に備えて『成年後見制度』や『家族信託』の制度があります。
■家族会議を開きましょう
まずは、我が家のことを考えるための『家族会議』を開きましょう。
家族会議では、所有者との意思疎通ができなくなった場合に備えて『成年後見制度』や『家族信託』の利用を検討したり、ほかに自分たちに合っている制度がないかなどを話し合ったりしましょう。また、分からないことを専門家に相談することも有効です。
■家族会議のポイント
我が家のこれからを家族で話し合うときに、1番大切なポイントがあります。それは、『将来相続権がある家族全員で話し合うこと』です。例えば、将来相続権を持つ家族が複数いるにもかかわらず、子どもなどそのうちの1人だけと話して我が家の進路を決めてしまうと、ほかの兄弟姉妹などとトラブルになり、将来『相続』が『争族(そうぞく)』になりかねません。そのようなことにならないためにも、将来、相続権を持つ家族全員で話し合い、納得できる進路を考えましょう。
とはいえ『家族が利用する場合』と『賃貸する』という選択を除いては、将来、我が家を手放すことになります。思い出がつまった我が家なので、そう簡単に手放すという決断はできるものではないでしょう。だからこそ、家族と思い出を共有したり、家の中の写真を残して見える形にしたりするなど、気持ちの整理をする期間が必要になります。家族会議は、このような気持ちの整理をするきっかけになります。
我が家の進路は、時間の経過と共に状況が刻一刻と変わっていくため、例えば、(1)所有者が元気なとき(2)施設入所時に(3)相続時に(4)建物が傷む前に(5)市から適正管理依頼の文書が届いてからなど、判断を後にするほど選択肢が減っていきます。また、建物は、老朽化していきますので、最も多くの選択肢から我が家の未来を検討できるチャンスは『今』でしょう。ぜひ、この記事をきっかけにして、家族会議を開いてみましょう。
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