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(特集)種をまく人 新たな農業の担い手に向けて(4)

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佐賀県吉野ヶ里町

■利益を追求する農業にこそ未来あり
大隈政美さん(59)

≪Profile≫
大隈政美さん(59)
上石動地区在住。兼業時代を含み、就農歴29年。効率化・コストカットを重視して農業を営む。「一度で済む苦労や仕事はやる」のがモットー。
経営作目:米・タケノコ

「これまでの農業は、補助金込みの黒字に甘んじて、生産性の低さから目を背けてきた。もっと利益を追求していかなれば、農家が生き残る道はない」。農業の行く末を厳しく見つめるのは、上石動地区の生産組合長、大隈政美さん(59)だ。

◇シビアな環境が招く後継ぎ問題
もともとは製造関係の企業に勤めていたが、途中、亡き父の家業を継ぐ形で、会社員と農家の二足のわらじを履くことに。その後早期退職し、現在は農業法人で週に数日働きながら自営農業に励んでいる。
同地区では農家が年々減り、50戸ほどあった農家も、今では5戸1法人となった。その原因を「利益的な厳しさ。もうけの無い仕事に魅力があるとは言えない」ときっぱり言い切る。山間部の農地は平地と比べて1枚当たりの面積が狭く、農機の作業効率が悪い。水利施設の管理や害獣対策なども平地より手間や費用がかかる。「高コスト・低利益」のシビアな環境が担い手不足を深刻化させている。

◇農業に持ち込んだ「コスト管理」
この厳しさに、大隈さんは利益化・効率化を図ることであらがっている。最大の武器は「データ化」。サラリーマン時代に業務改善を専門とする部署で培った経験を生かし、コストの考え方を農業に落とし込んだ。肥料の種類や配分、作業方法、作業時期など、年々少しずつ変えながら試行を重ね、それらを全て数値化してコスト判断をしている。そのかいあって、コストは父の代の半分にまで削減した。利益が出なくて悩む農家の多くは「肥料や農機など、良かれと思ってどんどんコストをかけてしまっているのでは」と見る。「いかに利益を上げるかを考え、工夫を重ねることが大切」と話す。

◇持続可能な農業へ
地区内に残る自営農家も、ゆくゆくは近くの農業法人に農地を託そうと考える人が多いという。ただ、この流れを大隈さんは前向きに受け止めている。「農業分野が利益を上げるには大型化・少人化が必要。今後、農業の主流は法人に変わっていくべき」。その一方で、山間部においては従来の農業にこだわらずに検討することも重要と話し、「家畜の放牧」や「菜園用としての農地貸し」、「植林」「ドッグラン」など考えを巡らせる。
農業の今後には、いろいろな可能性が残っていると話す大隈さん。利益を追求する農業にこそ、持続可能な未来を見ている。

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