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紫式部(むらさきしきぶ)・和泉式部(いずみしきぶ)・小式部(こしきぶ)の物語(序)

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佐賀県多久市

多久家資料『小しきふ(小式部)』より

表題の物語の出典は、奈良絵本(ならえほん)『小式部』(注1)です。主な登場人物は、平安時代の歌人として著名な紫式部、和泉式部、小式部の女性三人です。紫式部と和泉式部は同世代ですが、『小式部』では親子として設定されています。和泉式部と小式部は歴史上も物語の中でも親子です。つまり、この物語では紫式部が親、和泉式部がその子、小式部がその孫で、三代に渡る女性の物語になっています。物語が展開する要所で和歌を詠よむ場面があり、歌の道が大切なことも説いています。
『小式部』は、歌徳(かとく)説話(注2)を中心に、継子(ままこ)物語、鬼退治(おにたいじ)物語、酒呑童子(しゅてんどうじ)説話、道命(どうみょう)説話、伊勢物語、捨子物語など多様な物語や説話が織り込まれ、繋がれています。本文と挿絵を完備する『小式部』は、現時点では多久市本と岐阜大本の2点しか確認されていない貴重な資料です。5月から、挿絵11点を中心に11回の連載で物語を紹介します。なお、右側上段の写真は、『小式部』の表紙・本文・挿絵を合成したものです。

(注1)奈良絵本は、一般に室町時代後期から江戸時代前期にかけて、御伽草子(おとぎぞうし)、歌物語、軍記物語などを題材として制作されました。多久市所蔵の『小しきふ』は、江戸時代前期の作品と考えられます。
(注2)和歌を詠み、和歌の力で神や仏、人の心を動かし、幸福や利益が得られるという説話文学です。

多久市郷土資料館長 藤井伸幸(ふじいのぶゆき)

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