◆肺炎球菌ワクチンは接種すべきか
この頃はインフルエンザと新型コロナウイルスのワクチンの接種でお忙しいことかと思います。
前回のテーマは帯状疱疹ワクチンでした。再びワクチンがテーマです。
肺炎といえば、新型コロナウイルスによる重症肺炎が記憶に新しく残っておられるでしょう。現在は、新型コロナウイルスがデルタ株からオミクロン株に変異したため、幸いにも重症肺炎はほとんどなくなってしまったようです。
さて、肺炎を起こす病原体は非常に多くあります。肺炎球菌、インフルエンザ菌(インフルエンザウイルスとは別もの)、モラチセア菌、クラミドフィラ菌、マイコプラズマなどです。
これらの中でも肺炎球菌が昔から肺炎を起こす菌として最も恐れられてきました。肺炎球菌は小児の喉や鼻に常在している菌です。子どもが咳やくしゃみをして、放出された菌を大人が吸引して感染するといわれています。肺炎球菌はごく身近にいる菌です。
肺炎球菌による肺炎は重症化しやすく、その上、菌が血液中に入り込み、菌血症や敗血症を合併することがあり、また髄膜炎(髄膜とは脳を覆っている膜)を合併することもあります。致死率が高い病気です。
一般的には若くて持病もなく、元気に暮らしているような人には重症肺炎はめったにありません。やはり加齢にともなって重症肺炎は増加していきます。
肺炎球菌による肺炎は、ワクチンで予防ができます。肺炎球菌ワクチン接種が推奨される対象は、次のような人たちです。(1)加齢により体力が全般的に低下している(2)呼吸器、循環器に病気をもっている。糖尿病がある(3)腎不全で血液透析を受けている(4)抗ガン剤やステロイドなどの免疫抑制剤を使用しているなど
しかし、あまりに状態が悪い人、たとえば寝たきり状態で、たびたび誤嚥する(飲食物が間違って気管に入る)、咳反射が弱っている、鼻からチューブを通して胃に食物を入れているなどの人では、肺炎球菌ワクチン接種の意義はあまりないでしょう。なぜならこのような人では誤嚥性肺炎が多いからです。肺炎球菌よりも、むしろ口腔内に常在しているような黄色ブドウ球菌や緑膿菌などのさまざまな菌が肺炎の原因菌になることが多いからです。
65歳から肺炎球菌ワクチン接種が推奨されており、多くの自治体では接種費用の助成制度があります。65歳から5年毎に接種します。肺炎球菌ワクチンはすべての肺炎を予防するものではありませんが、なるべく接種することをお勧めします。
国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄
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