◆脂質について その(1)
健診などを受けると、脂質異常症と診断され不安になったことはありませんか。血液中には脂質が含まれています。その代表はコレステロールと中性脂肪(トリグリセライドともいう)です。その値が、あるレベルより高ければ異常症と診断されます。
では、いったい脂質は何のために存在しているのでしょうか?一般の人に次のような質問をします。
「コレステロールと中性脂肪は体の中でどんな役割をしていますか?」
回答は“動脈硬化を引き起こす”“血液をドロドロにする”などのマイナスイメージがほとんどです。点数を付けるとすると、100点満点中10点ぐらいかな(笑)。
今回はまず、これら脂質の役割について述べます。
◇コレステロールの役割は?
1.細胞膜の材料になっています。人体は50~60兆個の細胞からなっており、日々、古くなった細胞は壊れる一方で、新しい細胞が作られています。そのためにはコレステロールが必要です。
2.女性ホルモンや副腎ホルモンを作ります。
3.ビタミンDもコレステロールから作られます。
4.胆汁(肝臓から腸に排泄されている液体)に含まれている胆汁酸はコレステロールから作られており、腸における脂肪の消化吸収の役割を担っています。
5.神経鞘(神経線維を覆っている膜)の材料になっている。神経には電気が流れますが、神経鞘は電気の流れをスムーズにする役目があります。脳が白く見えるのはコレステロールのためです。
6.皮膚や血管のしなやかさを保つのに役立っているとも言われています。などなどです。
以上のようにコレステロールは、生命維持に必要不可欠な物質です。そもそも悪さをするために存在しているのではありません。
コレステロールは肝臓で必要な量だけ作られています。コレステロールを多く含む卵を毎日、2個ぐらい食べたとしても、血液中のコレステロール値に影響はありません。肝臓がコレステロールの製造量を調節するからです。
◇中性脂肪の役割は?
動物はぶどう糖と中性脂肪をエネルギーとして生きています。食物から取り込んだ脂肪(脂肪にはいろいろな種類がある)は肝臓で中性脂肪に変えられます。過剰に摂取したカロリーは中性脂肪に変えられて、そして皮下脂肪として貯められ、エネルギーが不足の時の備えとしています。ヒグマは3カ月間冬眠しますが、その間に子どもまで産んで育てることができるのは、冬眠前に貯めた皮下脂肪がエネルギーと水を産生するからです。ラクダの背中のコブの中身は脂肪です。飲まず食わず、2カ月間ほど砂漠で生き抜くことができます。脂肪は熱伝導率が低いので、体温の保持に役立っています。
以上、コレステロールと中性脂肪の役割について述べました。次回は、なぜこれらの脂質が悪者にされているのかをお話します。
国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄
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