◆脂質について その(2)
前回はコレステロールと中性脂肪の本来の役割について書きました。
脂質異常は動脈硬化の原因の一つとみなされています。少し難しい内容になりますが、分かりやすいように説明します。
◇“コレステロールには善玉と悪玉がある”?
“悪玉コレステロール”および“善玉コレステロール”はよく耳にしますね。いったいどういうことでしょうか?
もともとコレステロールは一種類の物質です。血液の中では、脂質(油)であるコレステロールも中性脂肪も“ある蛋白(アポ蛋白という)”が付着することにより、血液の中に溶けたような状態になっています。この脂質とアポ蛋白が合体した物質のことをリポ蛋白といいます。このリポ蛋白には数種類があり、構成している蛋白、コレステロール、中性脂肪の割合がリポ蛋白の種類ごとに異なっています。それぞれのリポ蛋白は異なる役割を持っています。臨床的に重要なのはLDLとHDLというリポ蛋白です。
LDL(低比重リポ蛋白)はコレステロールを多く含んでいて、その役割は肝臓で作られたコレステロールを各組織(消費地)に輸送すること。
HDL(高比重リポ蛋白)にはタンパク質が多く含まれており、各組織から余剰となったコレステロールを肝臓に戻す役目をしているとみなされています。
つまり、コレステロール(本来はゴミではないけど、ここではあえてゴミとします)を体のあちこちにばらまくのがLDLなので、悪玉とされ、逆にゴミを回収するのがHDLなので、善玉ということになったのです。配送業が悪で回収業が善というような感じですかね(笑)。なお配送業も回収業もどちらも生活に必須です!
◇“粥状(じゅくじょう)動脈硬化症”
動脈硬化症の一種に粥状動脈硬化症があります。冠動脈(心筋に栄養を送る血管)、頸動脈や下肢動脈などの比較的大きな血管に粥じゅくじょうしゅ状腫またはプラークというコレステロールの固まりが出来ることがあります。血管の内膜下に形成されます。それが大きくなり、血管内に隆起し、そこに血流がぶつかり崩壊すると、その部位に血栓が形成され、血流が途絶えます。心筋梗塞が代表的な疾患です。LDL―コレステロール値が高く、HDL-コレステロール値が低い人に粥状動脈硬化症が多い傾向があるのです。
これで悪玉コレステロールおよび善玉コレステロールの意味がお分かりになられたでしょうか。
◇中性脂肪
中性脂肪が高いことも動脈硬化症の危険因子と言われています。中性脂肪そのものは動脈に直接作用して動脈硬化症を起こしませんが、中性脂肪が高いと反比例的にHDL-コレステロールが低くなり、間接的に動脈硬化症の危険因子になっているようです。
国民健康保険脊振診療所 牛島 幸雄
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