◆「水辺の植物」
クリーク地帯の神埼南部は、日本でも有数の水生植物が豊富なところです。水生植物は、人の生活の場に近く、密着していました。
ヒシ、ハス、ショウブ、ヨシ、ガマ、マコモ、ホテイアオイなどその昔は至る所で見かけたものです。姉川、横武、直鳥の保存されているクリークや、集落の中に今も残るクリークは貴重なものです。
明治時代に日本に入って来たホテイアオイは、別名ウォーターヒヤシンス、夏の頃から次々と咲く花は、クリークが淡い紫色に染まるほどでしたが、近頃はほとんど見かけなくなりました。
ヒシやヨシは水質浄化の能力が高く、クリークにはうってつけの植物です。ヒシの実は市の特産品としてさまざまな商品に活用されていますが、最近は環境の変化や外来生物の影響などで減少し、ヒシでびっしりと覆われた水面は少なくなりました。
ハスも以前はクリークの定番の花でした。堀レンコンといっていた茎も、さらに青い実も食べていましたが、こちらも姿を消しつつあります。
今、吉野ヶ里公園の古代ハスが表紙のように咲き誇っています。大きなピンクのハスの花がそれは美しく、古代はこんなハスの花が神埼の湿地帯にも生えていたのでは…と感動します。
逆に以前はなかった外来の水生植物を見かけるようになりました。雑種アゾラという赤い浮草は、以前に流行ったカルガモを使った有機農法のその餌として外国から持ち込まれたアカウキグサが広がっていったものと思われています。
さらにスズメノヒエという外来の水草は、水面をびっしりと覆って繁殖するので、日本古来の水生植物の生息地を奪うことになりました。
それでも夏のクリークは、さまざまな植物の花に出合う水辺です。穏やかに広がる風景は、未来に残しておきたい佐賀の原風景だと思います。
文化財観光案内専門員 執行 真知子
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