■山野里宿遺跡出土折敷(おしき)
前回に引き続いて山野里宿遺跡の出土遺物のお話です。
山野里宿遺跡からは、木製品も非常に多くの種類が出土しています。椀や箸などの日常的に使う食器をはじめ、捏鉢(こねばち)、曲物(まげもの)、杓子(しゃくし)、折敷など炊事(すいじ)に使用するもの。下駄や草履(ぞうり)の芯となる板金剛(いたこんごう)などの履物(はきもの)。櫛(くし)や糸巻、土掘具(つちほりぐ)。さらには人形(ひとがた)や舟形(ふながた)など非日常的な呪(まじな)いに使う道具など多岐にわたります。
その中でも注目されるのが折敷です。
折敷とは、今でいうところのお盆にあたります。多くは隅切方形(すみきりほうけい)の底板の四辺に高さ1~2cmの側板(がわいた)を立てており、底板と側板に穴をあけて、樹皮で作った紐を通して固定しています。
山野里宿遺跡で出土した折敷の中には、1点だけですが底板が2枚貼り合わされているものがありました。しかも、厚さ2~3mmほどの板が2枚、木目を直交方向に違(たが)えて貼り合わされていました。言わば中世の合板です。管見のところ、他に例を見ない非常に珍しい作りの折敷です。底板の反(そ)りや歪(ゆが)みを矯正(きょうせい)する工夫であったと考えられます。
この折敷がどこで製作されたかは明らかではありませんが、中世に息づいていた先人のアイデアがうかがい知れる資料です。
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