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歴史探訪 シリーズまちかど文化財

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兵庫県丹波市

■笏谷石(しゃくだにいし)の狛犬(こまいぬ)
丹波市文化財保護審議会委員 山内順子

市島地域にある市ノ貝熊野神社の拝殿の格子戸越しに見る事ができる狛犬は、市内では9対しか確認されていない、笏谷石(しゃくだにいし)という石で作られた狛犬です。
笏谷石は福井市足羽山(あすわやま)で産出される淡い青色が美しい凝灰岩(ぎょうかいがん)です。「おかっぱ頭のようなたてがみ」という独特の意匠が可愛らしく、ほぼ全ての年代の笏谷石狛犬に共通します。ただし、たてがみの毛筋の刻みかたや尾の形、台座の形などは作られた年代ごとに異なっており、意匠が似ていることで同年代に作られたことがわかるというのも、笏谷石狛犬の大きな特徴です。写真の狛犬には年号は入っていませんが、ほぼ同じ意匠の狛犬が柏原八幡宮の内陣にもあり、その台座の裏面には寛文4年(1664年)の奉納と墨書があります。従って市ノ貝の狛犬も同時期に作られ、奉納されたと推定できます。
鉄道も高速道路も無かった江戸時代に、丹波で産出しない笏谷石の狛犬はどのように運ばれてきたのでしょうか。
笏谷石の狛犬は、福井県一の大河である九頭竜川の河口に位置する三国湊という港から、北前船などの大きな船に乗って各地に向かったことがわかっています。それは、全国の北前船などの寄港地に同様の狛犬があるからです。しかし丹波市は海に面していません。考えられるのは、由良川の河口で海船から川舟に乗り換えて、川を遡ってやってきたということです。その理由として、笏谷石の狛犬の分布を調べてみると由良川沿いに多いことがわかってきたからです。
現在は、つい忘れてしまいそうになりますが、舟運という川の恵みを、改めて思い出させてくれる狛犬なのです。

問合せ:社会教育・文化財課(山南庁舎内)
【電話】70-0819

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