◆獣害の減少を信じて活動
猟師の視点
有害鳥獣の捕獲活動に欠かせない猟師の存在。
佐用郡猟友会の西坂越次会長(上町)に佐用町の″猟師の今とこれから″を聞きました。
◇猟師の課題も高齢化
キジなどの小動物の猟を趣味にするために50年前に猟銃の免許を取得した西坂さん。しかし、30数年前からはシカによる獣害が深刻になり「今でも獣の捕獲依頼が増えている」と言います。
猟友会では、応援隊も含め、現在約120人の猟師が登録していますが、シカの増加とは裏腹に、猟師の減少と高齢化が問題となっています。西坂さんは「猟に必要な人が足らず、捕獲数が増えない。阪神方面からの応援隊を呼んで猟に出ています」と猟師の苦悩を語ります。
◇獣害を防ぐために里山の管理を
山の中で猟をする猟師として思う獣害対策を「山をきちんと管理することで獣は人里に下りて来なくなる」と西坂さん。「やぶとなった山林は、獣が隠れることが容易ですぐに逃げ込むことができる。また、管理されていない山中の日の当たらない場所は、獣が食べる植物が育たず、獣が農作物を食べに来る原因となっている」と話します。
ドローンを使った狩猟など新たな取り組みを始めた西坂さんは「今後は、時代に見合った、地域が主体となる持続可能な獣害対策を一緒に考えていければ」と猟友会と農家が手を取り合い、獣と闘っていくことを誓いました。
●野生動物の生態
・イノシシ
好きな食べ物:雑食性で人間が食べるようなものは何でも食べる
特徴:通りなれた獣道を往復して移動する。興奮すると、人に向かって突進し、危害を加えることもある
・シカ
好きな食べ物:草食性で植物は何でも食べる
特徴:一定の地域に定着して生活する。助走せずに2.0メートル以上の障害物を飛び越えられるが、防護柵などの下をくぐり抜けることが多い
・サル
好きな食べ物:果実や種子、葉、芽など植物性のものを中心に食べる
特徴:主に日中に行動し、夜間は行動しない。高い学習能力を持ち、器用な手先を使って食べ物を食べる
・クマ
好きな食べ物:雑食性だが、木の実や果実などの食べ物が好物
特徴:基本的には警戒心が強く、自ら人に近寄っては来ないが、出会ってしまうとクマが驚き、襲ってくることがある
◆獣との闘いを終わらせる
獣害ゼロの町へ
なくならない獣害とこの先どう向き合っていけばいいのか。仁方集落を成功事例に導いた山端(やまばた)直人教授に聞きました。
◇成功要因は「まとまり」
長年、農地の鳥獣害の研究に取り組む山端教授は、一昨年から仁方集落のアドバイザーとして、獣害に苦しむ農家の味方となっています。佐用町での取り組みを山端教授は「個人では限界がある獣害対策を、集落と行政が手を取り合って、ここまで取り組んでいるのは珍しい。その甲斐もあって、明らかに被害が減り、成果が見えてきている」と手応えを口にします。
また、対策がうまくいかない地域もあるなか「仁方集落は、なぜ成果が出ているのか」と尋ねると「みなさん当事者意識が高く、前向きに取り組んでいる。また、地域のまとまりがよいのも成功の要因のひとつ」と、地域全体で獣害対策に取り組む重要性を教えてくれました。
◇闘いに″終わりはある”
「終わらない獣との闘いにどう向き合うべきか」との質問に「獣害問題は間違いなく解決する」と即答した山端教授。「獣がいなくなることはないが、個人ではなく集落単位で取り組めば必ず被害はなくなる。この取り組みが、仁方集落から江川地域、江川地域から町全体へ広がることを願います」と話し、「この獣害対策が、これからの地域社会を考えるきっかけとなるように、町と共同で取り組んでいきたい」と獣害対策から地域コミュニティを形成する″正のサイクル”への未来を見据えました。
●Message
・農家のみなさんの″笑顔″が私の一番の収穫です
昨年4月に神戸市から佐用町に出向して、1年間獣害対策に携わりました。
この広報紙で紹介した仁方集落では、住民同士の顔が見え、集落内で連携・役割分担ができているからこそ、良い結果が出たと感じています。
微力ながら、少しでも被害が減るようにと取り組む中で「獣害が減った」「今年は収穫量が多かった」と話してくださるみなさんの笑顔を見られたことが、私の一番の収穫となりました。
引き続き、農家のみなさんがやりがいを感じながら、農業を続けていかれることを願っています。
(農林振興課 三浦 雅弥(神戸市からの派遣職員))
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