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特集 中北歌舞伎、ここにあり 36年の幕が下りる、そのときに(2)

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兵庫県多可町

■最終年度スタート
「おはようございます!よろしくお願いします。」
放課後の体育館に子どもたちの声が響きます。5月から始まった中北歌舞伎の最後の練習。
山根師匠とともに子どもたちに指導するのは、地域の指導者を務める橋本裕子さんと藤井環さんです。
子どもたちは、頭のてっぺんから足の先まで、全集中。
役者だけでなく、黒衣の下級生たちも、自分の動作を何度も何度も師匠に確認します。
山根師匠は、常に子どもたちの動きに目を配り、先生たちもアドバイスに耳を傾けます。
36年前と変わらない時間が、そこには流れていました。

■6年生クラブ員 Interview
▽亀(かめのじょう) 伊藤洸太朗さん
お父さんが歌舞伎をしている写真を見て、かっこいいと思って入りました。先生も優しくて、普段できない経験ができました。最初はどきどきしたけど、すごく楽しかった。
山根先生から教えてもらったことを上手くできました。
北小の自慢の歌舞伎がなくなるのはさみしいけど、いい経験ができました。

▽中の太夫 迎山千咲さん
難しい部分もあったけど、絆が深まるし、すごく楽しい。
すごくたくさんの人たちが支えてくれてここまでこれました。
最後の舞台、たくさんの人に見てもらえてすごくうれしかった。
出来は100億点!

▽鶴(つるのじょう) 遠藤愛斗さん
お兄ちゃんが歌舞伎をしていたのでかっこいいなと思って入りました。難しいけどコツをつかむのが楽しい。
少し間違えたけど、最高の演技ができました。36年間守り続けてきた歌舞伎が終わるのはさみしいけど、歌舞伎で学んだことをいかしながら、自分の道を歩んでいきたいです。

■Nakakita kabuki Interview
▽生涯生きて働く力
平成元年から中北小勤務 多可町教育長 越川昌信
ちょうど平成元年に中北小へ着任して、6年生を担任しました。当時、和歌若師匠が褒め上手で、公演後の声かけもすばらしかった。教師の立場から見ても、とても勉強になりました。子どもたちは、数多くのサポートを得ながら晴れ舞台に立って、そこで拍手喝采を浴びる。その達成感は、学校の授業だけでは味わえない大きな力を得るし、人生において絶対に生きて働く力だと思います。
どんな仕事についても、あのとき歌舞伎で一生懸命がんばって舞台に立って、すごくうれしかったという体験は、生涯心に残ります。それくらいすばらしい体験学習の場だったと感じています。
中北歌舞伎は終わりますが、こういった経験をする場がなくなるのではなく、カブキッズたかや多可町播州歌舞伎クラブという受け皿があります。
これからも、晴れの舞台に立つ子どもが一人でも増えてくれると嬉しいと思います

▽この経験が次のチャレンジに
橋本裕子さん(地域指導者)
今回終わってしまうことは、すごく残念だなと思うんですが、播州歌舞伎が小学校時代の大きな思い出となって、心に残っていくという経験を子どもたちがしてくれたことは、本当に良かったなと思います。
最近はタブレットで練習することがあって、家で一生懸命練習してくれる子がいます。自分がもらった役を全うしようとしていることがすごいな、と思います。
播州歌舞伎に取り組んだことは大きな経験です。
これからの人生の中で、やってみたいことがあったら何でもチャレンジして欲しいです。

▽たくさんのことを教わった
藤井 環さん(地域指導者)
子どもたちは、クラブ活動の時間をすごく大事にしてがんばって練習しています。
中北歌舞伎が終わってしまうのは、やっぱりさみしいです。私の子どもたちも、小学校のころに歌舞伎クラブに入っていました。その経験は、社会人になってもとても役に立っていると感じます。
町にはカブキッズたかがあるので、やりたい子どもたちは、またそこで続けてくれたらと思います。
私は歌舞伎に関しては全くの素人なので、山根先生からたくさんのことを教わりました。子どもたちと同じ位置に立って、歌舞伎とはこういうものとか、こんな風にするんだと教わりました。子どもたちからもたくさんのことを学びました。貴重な時間を過ごさせてもらいました。ありがとうございました。

■最終公演の幕開け
「トザイ トーザイ」
元気な口上が体育館に響き、最終公演の幕が開けました。
会場には、全校生、保護者、地域の人たち、OBOGなど約130人が集まり、立ち見もでるほどの満席となりました。
「間違えてもいいから、大きな声で堂々と。」
山根師匠の言葉に背中を押され、子どもたちは、最後の公演に挑みました。
「よ!待ってました!」
「中北歌舞伎!日本一!」
役者が見得を切るたびに、あちこちから、大向こうがかけられます。
最後の場面では、客席からたくさんのお捻りが舞台に投げられ、拍手喝采の中、36年の中北歌舞伎の幕が下りました。
中北歌舞伎、ここにあり。

■Nakakita kabuki Interview
▽中北歌舞伎は地域の顔でした
中北歌舞伎立ち上げに関わった 元中町北小学校教諭 井上文夫さん
昭和63年3月頃に、中村耕造先生に、「井上君、今晩空いとるか」と声をかけられて、嵐獅山師匠の家に行きました。それが、播州歌舞伎との初めての出会いです。
その後異動になり、一時は離れましたが、平成14年に中北小に着任し、7年間、播州歌舞伎に関わりました。とても充実した時間でした。
平成9年には、教育委員会で中央公民館播州歌舞伎クラブを担当したこともあり、中北小で歌舞伎を習った子どもたちともたくさん関わりました。
今回、終わりを迎えることは、とても寂しいです。大人の歌舞伎も、カブキッズたかも、土台は中北歌舞伎です。
私も、多可町中央公民館歌舞伎クラブで役者をやっていて思いますが、播州歌舞伎は本当に価値のあるものです。これから先の不安はありますが、これまで続けてきたこの宝物を無くさないようにしないといけません。

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