文字サイズ
自治体の皆さまへ

起立性調節障害って知ってますか?(1)

1/58

兵庫県多可町

德平 珠一さん(16歳)
中町中学校卒業。現在は、西脇北高校1年生。中学校で起立性調節障害を発症し、現在も治療を続ける。

■知ってほしい起立性調節障害のこと
▽「朝が苦手」は、もしかしたら
朝起きられない、身体がだるい、気分が悪い、頭痛がする、遅刻や欠席を繰り返す。
そんな子どもたちがたくさんいます。
その子どもたちの約半数が、「起立性調節障害」と呼ばれる病気だと言われています。
起立性調節障害は、自律神経機能の不具合によるもので、小学校高学年(第二次性徴期ごろ)から中学校、高校生までに発症します。
朝が苦手、という子どもたちは多いですが、思春期になって朝なかなか起きられない、遅刻しそうになる、遅刻してしまう、という場合は、起立性調節障害の可能性があります。
昔は、怠け病、不登校の症状などと言われていましたが、現在は、正確に診断できる検査方法もあり、安易に怠けているなどと決めつけず、小児科で診察を受けてみることも大切です。

▽二次障害を防ぐために
起立性調節障害の症状に対して、保護者や教師などは「気持ちの持ちよう」と思いがちです。
「みんなができることはしないといけない」「友達を作らないといけない」「勉強しなければいけない」と、頭ごなしに固定概念を押しつけることで、子どもたちは自分をわかってもらえないとネガティブになり症状が悪化します。
遅刻や欠席・不登校が続くことで、ひきこもりや精神の不安定、気持ちの落ち込みなどの二次障害につながます。重症化を防ぐためにも、周囲の理解が不可欠です。

▽起立性調節障害11の症状
(1)立ちくらみ、またはめまいを起こしやすい
(2)立っていると気持ちが悪くなる
(3)入浴時や嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
(4)少し動くと動悸や息切れがする
(5)朝なかなか起きられず午前中調子が悪い
(6)顔色が悪い
(7)食欲不振
(8)臍疝痛(強い腹痛)をときどき訴える
(9)倦怠感がある、または疲れやすい
(10)頭痛
(11)乗り物に酔いやすい
これらの症状は1日のなかでも変化があり、一般的に朝や午前中が重く、夕方になるにつれ軽くなります。
また、起立性調節障害の程度が強くなって、遅刻や欠席を繰り返すようになると、勉強が手につかなくなり、学習や行動などにも影響が出てきます。
参考文献:「子どもの起立性調節障害(中央法規)」

▽起立性調節障害の子どもへのNGワード
・夜遅くまでスマホを見ているから起きれないんだ
・朝しんどいのは根性がないからだ
・ゲームができるんだから勉強もしろ
・少しくらいしんどくても学校へ行け
・しんどいのは仮病なんじゃないのか
起立性調節障害は成長とともにいずれ回復します。決して焦らず「子どもを信じて見守る」ことが大切です。

■中学2年のとき ぼくは起立性調節障害と診断された 德平珠一さん
▽朝ごはんが食べられない
西脇北高等学校の3部に通う高校1年生の德平珠一さんは、中学2年生のとき、起立性調節障害と診断されました。
「朝からめまい、吐き気、頭痛で起きられない。夜は寝れないという不調で、学校に行きたいのに行けない日が続きました。」
お母さんが珠一さんの不調に気がつき始めたのは、小学校5年生の頃でした。朝ごはんが食べられず、吐いてしまう。学校に行っても保健室で寝ているだけ。
そんな日が多くなりました。
相談しても、周りからは夜遅くまでゲームをしていないか、寝不足なんじゃないか、と言われるだけだったと言います。
「中学2年の5月、6月は本当にしんどくて、1学期の出席日数は71日のうち44日が欠席、遅刻が10日、早退が5日。今見てもめっちゃひどいな。」
中学校の通知簿を見ながら珠一さんがつぶやきます。

▽学校に行けない不安
「これはただの怠けや学校に行かないための嘘じゃない。」
お母さんは、毎朝トイレに駆け込み苦しむ珠一さんの記録を必死で残し続けました。
「2学期は81日中遅刻が59日。登校しても保健室で寝ているだけでした。」
朝が起きられず授業にどうしても間に合わなかった珠一さんは、野球部の部活だけ出るという日も多かったと言います。
「クラスになじめなくて辛かった。学校に行けないということがすごくしんどくて、誰に何を言われているのかわからない不安でいっぱいでした。」
授業に出られないからどんどん成績が落ちる。授業に出ても机に突っ伏してしまう。それが寝ている、だらけていると捉えられてしまう。
なんで起きられないんだろう、さぼっているわけじゃないのに…。
続く不調に珠一さんはどんどんうつのような状態になり、落ち込んでいきました。

▽友達に救われた日々
食べられないことでどんどん痩せていく珠一さんの姿を見ながら、お母さんはなんとか救いたいと必死で病院をまわりました。
そんな珠一さんの心の支えが、小学校からの親友でした。
「朝、学校とは正反対のぼくの家まで自転車で誘いに来てくれるんです。おーい、起きられるか!って。無理やって言ったら、そうか!て、そこから学校に行くんです。本当に救われました。」
馬鹿にしたり悪く言う子が一人もいなかったことに救われたと話すお母さん。周囲の理解があったからこそ、学校に珠一さんの居場所が在り続けました。
「夕方3時頃から回復して元気になるから、それがちょうど部活の時間でした。先生たちも部活だけでもおいで、と言ってくれて、前向きになれました。野球、やっぱり楽しいなって。」

▽振り回された高校受験
2年生の3学期ごろから症状が落ち着き、3年生になると朝から登校できるようになりました。
「授業に出られるようになって成績も上がっていって、受験も前向きに考えるようになりました。オープンハイスクールもあちこち参加して、進路を考えていました。」
でも、また悪夢が襲いました。10月頃、体調が悪化。珠一さんは、進路先として夜間制や通信高校なども調べ始めました。
「そこで西脇北高校に3部がある、野球部があると知りました。将来のことを考えると高校は絶対卒業したい。そのためには、4年かかってもいいから卒業しようと思いました。」
朝が苦手な珠一さんは、自分の体調を理解し、夕方から通学できる西脇北高校を選びました。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒107-0052 東京都港区赤坂2丁目9番11号 オリックス赤坂2丁目ビル

市区町村の広報紙をネットやスマホで マイ広報紙

MENU