■私たちの暮らしを守る森林
多可町の総面積のうち、約8割を森林が占めています。豊かな森林は町の「宝物」です。
森林は、所有者の財産であるとともに、水源かん養、山地崩壊の防止、空気の浄化作用、野生動物の生態調和、また木材や森林空間の利用による保健的機能といったさまざまな役割を担っており、私たちの暮らしを守っています。
■地球温暖化の脅威
近年、地球規模で温室効果ガスが増え、温暖化が進んでいます。記録的な猛暑や集中豪雨などの異常気象は、こういった気候変動による影響とみられています。
地球温暖化対策は喫緊の課題となっており、令和2年10月、国は、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すことを宣言しました。
▽カーボンニュートラルって?
温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること※詳しくは、本紙をご覧ください。
■森林を守ることが解決策のひとつ
樹木は光合成により二酸化炭素を吸って、酸素をはき出して生長します。特にこれから生長する若い木は、すでに生長した木に比べて多くの二酸化炭素を吸収します。
つまり、生長した樹木を切って、新たに木を植え育てることは森林を活性化させ、私たちの生活環境を改善することに繋がるのです。
■日本の森林を支える税の創設
しかし、森林整備を進めるための財源の不足や、木材価格の低迷、森林所有者の高齢化などが要因となり、所有者や山の境界が分からない森林が増えつつあるため、整備が行き届かなくなっています。
このような状況の下、国において、国民一人一人が等しく負担を分かち合って日本の森林を支える税の仕組みとして、「森林環境税」および「森林環境譲与税」が創設されました。
この特集では、多可町の森林の現状と、新しく創設された「森林環境税」「森林環境譲与税」について、考えていきます。
■Interview 森林の現状と課題
北はりま森林組合
管理課課長 金髙健作さん
参事 藤田和則さん
森林に関する課題について、森のスペシャリスト、北はりま森林組合のお二人に話を聞きました。
▽山に関心を向け未来へつなげ!
「森林の適正管理は最重要課題です。全国各地で起こっている豪雨災害による土砂崩れは、手入れされていないスギ・ヒノキの人工林での発生が多く、人工林が多い町でも、減災防災に繋がる森林の整備を進めないといけません。」
人工林とは、収穫目的のために人が植えたもので、最後まで人が維持管理をしないと環境悪化に繋がってしまいます。
「町の森林は約60%が人工林のため、森林組合では、森林所有者と協力しあい、森林整備を進めています。具体的には、生長した木が混みあうと、互いに支障をきたすので、健全な木の支障となる木を伐採し、空間を空けて光環境を良くします。この間伐整備をすることで森林全体を強靭化できます。
また、標準伐期林齢(40年)を越えた森林を全て伐採、収穫し、新たに植林をする皆伐再造林の整備を進めることで、木材資源を循環的に収穫・確保できるとともに、森林を若返らせることで地球温暖化抑制に繋がります。」
しかし、環境維持に必要な整備を進めるにはさまざまな問題が。
「地域住民、森林所有者が森林管理への関心が薄い、自分の山や境界が分からない、整備する財源が少ない、技術者不足など課題が山積みです。安全安心な生活を送るためには森林の維持管理は欠かせません。皆さんには、身近にある山に目を向けていただきたいです。」
創設された『森林環境譲与税』は森林整備の重要な財源です。次世代に貴重な森林資源を残すため、みんなで関心を持ち、豊かな森林を共に守っていきましょう。
■森林環境税と森林環境譲与税の仕組み
◆森林環境税とは
地球温暖化防止や災害防止等を図るため、森林整備に必要な地方財源を国民一人一人が等しく負担して森林を支えるという観点から創設。
令和6年度から個人住民税の均等割と併せて、国税として年額1,000円を市町村が徴収します。
◆森林環境譲与税とは
国で徴収した森林環境税をもとに、市区町村と都道府県に再配分するものが「森林環境譲与税」です。森林整備の促進に対応するため、森林環境税の課税に先行し、令和元年度から前倒しで譲与され、活用されています。
◆森林環境税の施行により今までの町県民税とどう変わる?
「森林環境税」は令和6年度から、個人の町県民税の均等割と併せて、年間1,000円を町が賦課徴収します。
令和5年度まで、町の均等割は復興財源(※1)として町民税・県民税にそれぞれ500円(計1,000円)を加算して徴収していましたが、令和6年度からは復興財源の加算分が無くなります。そのため均等割の額は変わりません。
※1東日本大震災の教訓を踏まえた緊急防災・減災事業を推進するための財源で、平成26年度から均等割に加算されているもの。
▽均等割額
・令和5年度まで
↓↓
・令和6年度から
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