◆「わからない」問題
「もう差別なんてないでしょう?」、「あったとしても大した事ないのでは?」という声を耳にすることがあります。皆さんはどのように思われますか。
兵庫県人権啓発協会が行った「人権に関する県民意識調査」の結果報告書(令和6年3月)によると、県民一人一人の人権意識は、前回(5年前)の調査結果に比べて高くなっていることが分かりました。昨今、「多様性と包摂性」や「誰一人取り残されない社会の実現」という言葉をテレビや新聞、ネットニュースなどでも頻繁に目にするようになり、確実に人権文化が私たちの社会に根付いてきているように感じます。
ところで、本調査では、「○○に関してどのような人権問題が起きていると思いますか」という設問がありました。「○○」には、「女性」や「障がいのある人」など、個別の人権課題が入ります。さまざまな個別の人権課題の中で、「性的少数者」と「部落差別」と「日本に暮らす外国人」だけ、「分からない」と回答した人の割合が、20%を超えていました。これらの項目に共通するのは、差別を受けている少数派の声が、多数派に届きにくい点にあります。
性的少数者や部落差別を受けている人が、社会に向けて声を発することは、自身をカミングアウトすることになります。その行為には、さらなる差別のリスクが伴うため、なかなか声を発しにくい現状があります。また、日本に暮らす外国人に関しては、言葉の壁や文化の違いなどから、あまり交流を深めることができておらず、困り事や差別の現状を多数派が知る機会はなかなかありません。関西大学の内田龍史教授は、「厳しい差別ほど顕在化しにくい特性がある」と言われていました。
日常生活の中で、「分からない」、「大した事ない」と感じることほど、「もしかしたら当事者は今も厳しい現状にあるのではないか」と考えることが大切です。そして、これらの人権問題に対し、「分からない」ではなく、課題意識をもって自身をアップデートし、一人一人の人権を大切にする明るい町づくりに向けて取り組んでいきたいですね。
問合せ:社会教育課
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