体を温め、1日の疲れを癒してくれるお風呂。しかし、冬季を中心として、入浴中に意識を失い、浴槽の中で溺れる事故が多くなります。特に高齢者は暑さや寒さの感覚が低下している傾向にあり、入浴中に溺れて亡くなる人は交通事故で亡くなる人より多いのが現状です。どうしたら入浴中の事故を防げるのか、特に注意が必要なヒートショックについて紹介します。
■不慮の事故発生状況
厚生労働省の「人口動態調査」によると、65歳以上の不慮の事故を死因別に比較すると、「転倒・転落・墜落」、「窒息」、「溺死・溺水」の順に多く、「交通事故」による死亡者数を超えています。「溺死・溺水」では浴槽での事故が8割を占めており、その約9割が家で発生し、原因の多くはヒートショックによるものです。
■ヒートショックとは!?
ヒートショックとは、温度の急激な変化で血圧が上下に大きく変動することによって起こる健康被害とされており、失神、心筋梗塞や不整脈、脳梗塞を発症したりすることがあります。急激な温度の変化によって起こる血圧の変動であるため、高血圧や糖尿病、動脈硬化、肥満、睡眠時無呼吸症候群、不整脈がある人は特に注意が必要です。
健康な人でも、浴室に暖房設備がない場合や、一番風呂、42度以上の熱い風呂、長風呂の場合、ヒートショックが起こりやすくなります。
■入浴時の予防ポイント
(1)脱衣室や浴室内を暖めましょう。
(2)入浴する前に同居者に一声掛け、意識してもらいましょう。
(3)食後すぐや、飲酒後、服薬後の入浴は避けましょう。
(4)こまめな水分補給をしましょう。
(5)湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。
(6)浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
(7)浴槽内で意識がもうろうとしたら、気を失う前に湯を抜きましょう。
■事故発生時の対応方法
もし、浴槽でぐったりしている人(溺れている人)を発見したら、まずは焦らず落ち着いてください。出来る範囲で対応しましょう。
(1)浴槽の栓を抜く。大声で助けを呼び、人を集める。
(2)入浴者を浴槽から出せるようであれば救出する。出せないようであれば、蓋に上半身を乗せるなど沈まないようにする。
(3)直ちに救急要請(119)をする。
(4)反応がない場合は、呼吸を確認する。
(5)呼吸がない場合には、胸骨圧迫を開始する。胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を救急隊が到着するまで繰り返す。人工呼吸ができなければ胸骨圧迫のみ続ける。
浴室内での事故は、発見が遅れることが多いといわれています。そのため、同居者同士で意識し気を付け、安心して入浴ができるようにすることでヒートショックを予防しましょう。
また、ヒートショックは入浴時以外にも、暖かい部屋から寒いトイレや廊下、リビングへの移動、外出時にも起こることがあります。あらかじめ暖房をつけることや、温かい服装で外出するなど対策をとるように心掛けてください。
ストレスを感じやすい人も、日頃から自身の健康を意識して過ごしましょう。何か不安な事や気になることがあれば、早めに医師に相談しましょう。
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