◆善玉も悪玉もある腸内細菌とは?
腸内には、およそ1000種類、100~1000兆個の細菌が住みついていると言われています。この腸内細菌には、腸に良い働きをする善玉菌と腸内で有害物質を作る悪玉菌、そのどちらでもない中間の菌がいます。腸内細菌の中で一番数が多い菌は中間の菌で、次に善玉菌が多く、悪玉菌は少数です。腸内細菌の種類は個人によって異なり、さらに食事や生活習慣、加齢、ストレスなどによっても変化します。
悪玉菌は、たんぱく質や脂質が中心の食事・不規則な生活・ストレス・便秘などが原因で腸内に増えてきます。腸内細菌は肥満、糖尿病、大腸がん、動脈硬化症、炎症性腸疾患などの疾患と密接な関係があります。健康的な腸内環境は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が優勢であり、その他の菌ができるだけ劣勢である状態です。善玉菌は、腸内を酸性にすることによって、悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染症を予防したり、発がん性をもつ腐敗産物の産生を抑制する腸内環境を作ったりします。また、善玉菌は腸内でビタミン(B1・B2・B6・B12・K・葉酸)を産生します。さらに善玉菌の体を構成する物質には、体の免疫機能を高め、血清コレステロールを低下させる効果も報告されています。悪玉菌には悪いイメージがありますが、肉類などのたんぱく質を分解し、便として排泄するという大切な働きをしてくれる必要不可欠な存在でもあります。
◆善玉菌が喜ぶ食品
腸内の善玉菌の割合を増やす方法には、大きく分けて2通りあります。
まず1つ目は、健康に有用な作用をもたらす生きた善玉菌である「プロバイオティクス」を直接摂取する方法です。食品ではヨーグルト・乳酸菌飲料・納豆・漬物など、ビフィズス菌や乳酸菌を含むものです。ただし、これらの菌は腸内にある程度の期間は存在しても住みつくことはないとされています。そのため、毎日続けて摂取し、腸に補充することが勧められます。
2つ目は、腸内に存在する善玉菌を増やす作用のある「プレバイオティクス」を摂取する方法です。食品成分としてはオリゴ糖や食物繊維で、これらの成分は野菜類、果物類、豆類などに多く含まれています。オリゴ糖はヒトの体内には消化できる酵素が少なく、胃や小腸で消化・吸収されることなく大腸まで到達し、腸内に存在する善玉菌に、好きな炭水化物の「エサ」を優先的に与えて、数を増やしてくれます。オリゴ糖は、大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品にも多く含まれているので、これらの食材を食事に取り入れると良いでしょう。
◆運動すると腸も活動的に
腸内環境を整えるには、腸そのものを動かす習慣をつけることも重要です。適度な運動は、体を振動し筋肉も動かすので、腸内の便の動きをサポートしてくれます。便を送り出すときには、腹筋や、体の深部にある腸腰筋が後押しをしてくれるので、ウォーキングなど下半身の運動を増やすよう心がけましょう。エレベーターを使わずに階段を使ったり、お店の駐車場で遠いところに停めたり、念入りに掃除をしてみたり、ラジオ体操を習慣にしてみたり、ちょっとした行動を変えてみると運動量を増やすことが出来ます。また、十分な睡眠や朝食を摂ることでも腸内のリズムが整います。朝の目覚めに一杯の水や白湯を飲むと、大腸の反射を促すことが出来るのでおすすめです。
◆便に現れる腸の健康状態
腸内細菌が健康的な好ましい状態であるかどうかを知るもっとも簡単な方法は、便を観察することです。善玉菌がたくさん酸を作っていると、色は黄色から黄色がかった褐色で、においがあっても臭くなく、形状は柔らかいバナナ状が理想です。逆に黒っぽい色で悪臭がある便は、腸内細菌のバランスが悪くなっている状態です。健康づくりにはおなかの中の同居人である腸内細菌の状態をよく知り、仲良くなることが大切です。
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