■地区福祉委員 課題をボランティアで解決
多田東地区福祉委員会 なのはな会長 辰巳眞理子さん
●困りごとは地域困りごとはで手助け
○制度の不足部分を支える
多田東地区で有償ボランティア活動を行っている「なのはな」では、1人暮らしのお年寄りなど、ちょっとした不便で困っている人をお手伝いしています。部屋の掃除や電球交換、花の水やりなど。介護保険サービスなどの制度で補えない部分を、ボランティアが支えているんです。
○活動を拡大・継続するため
令和2年まで無償で活動していましたが、あえて交通費程度の有償に変更しました。
きっかけは、無償だと気を遣うという声をいただいたことです。需要が増えていたこともあり、規模を拡大するためにも、変更しました。
また、市から多田東コミュニティに支給されている地域づくり一括交付金も活用し、持続可能となる基盤づくりを行いました。計画的に活動していくには、次年の予算を先に確保する必要があります。
令和4年までは、コミュニティから配分された交付金などを元に年間計画を立て、チラシ配布などを行いました。令和5年以降は交付金なしでも継続できる見通しです。
○幅広い地区福祉委員の活動
なのはな以外にも、多田東地区福祉委員会はいろんな地域活動をしています。
例えば、認知症の人への接し方などを伝える認知症サポーター養成講座を中学校で行ったり、小学校にミシンの使い方を教えに行ったり、保育所のクリスマス行事を手伝いに行ったり。多くの場面でボランティアの力が必要とされているんです。人手が足りないなど課題はありますが、これからも地域のために続けていきたいと思います。
●安心して依頼してもらうために
なのはなコーディネーター 佃義廣さん
依頼を受けたら、まずコーディネーターが自宅に伺って内容を確認します。制度やシルバー人材センターを利用すべきものや、身体介助などの資格が必要なものなど、利用者の安全などを考えると受けられないものがあるんです。他にもサービスに差が出ないよう、勉強会を行ったりお手伝いごとのルールを決めたり、安心して依頼してもらえるよう工夫しています。
●前向きな日常を取り戻せた
なのはな利用者 能勢勲夫さん
妻が亡くなって1人になってから、身の回りのことに手が回らなくなっていました。足を悪くしていることもあり、余計に落ち込んでしまって。外に出ることも少なくなり、掃除や草引き、ゴミ出しだけでなく、妻が大切にしていた花木の手入れもおざなりになっていました。
そんな時にチラシで知ったのが、なのはな。ボランティアさんに来ていただくようになってから、生活がとても明るくなりました。自分ではできない部分を補ってもらえるだけでなく、たわいもない話をすることが心の支えになっているんです。今では次に来たらこんなジョークを言おうかな、なんて考えるのが楽しみになっています。
きれいになった部屋や庭の花木に囲まれて過ごしていると、ふとした時に妻が居た頃を思い出して、懐かしい気持ちになります。これもボランティアさんのお陰です。本当に感謝しています。
●ボランティア 経験を生かして楽しみながら
なのはなボランティア 中野美知代さん
ボランティアを始めたきっかけは、自分が病で倒れたことでした。その時に周囲に支えてもらい、受けた分の優しさをお返ししたいと思うようになったんです。
なのはなの活動に携わってみると、主婦の経験が生きてとても楽しいです。何回か訪問させてもらううちに、次はあれをやれば不便がなくなるんじゃないか、こんな工夫してみようとアイデアが浮かんでくるんです。それで利用者さんが喜んでくれると、やってよかったと幸せな気持ちになります。
活動は2人以上ですることが多いので、ボランティアの友達と仲良くなってお茶をしたり、遊びに行ったりすることもあります。趣味や特技を生かすのが楽しい、運動になるので続けているという人もいますね。これからも楽しみながら続けていきたいと思います。
●「地域の」支え合いが重要
地区福祉委員会 代表 浜上章さん
地区福祉委員は、制度では補えない地域課題をボランティアで解決する役割を担っています。活動はさまざまで、なのはなのように自宅を訪問して支援するものもあれば、カフェ運営やイベントを行い、人のつながりをつくるものもあります。折り紙や歌の会などフレイル予防の取り組みの他、こども食堂などにも取り組んでいるんです。それらはいざという時も、ちょっとした困りごとが起きたときも、地域で支え合えるようになることをめざして行っています。
なぜ地域で支え合う必要があるのか。年を取って1人暮らしになったり、病気になったりした時、親族の支えや公的サービスだけでは日々の暮らしを維持することは難しいです。そして日々助け合う、今助けてほしいとなると、近所の人になります。多くの人に将来訪れる状況ですが、直面しないと自分ごととしてとらえにくいですよね。でもそのことを皆に伝えて、輪を広げていく必要があると思っています。
今後も、少しでも皆が安心して暮らせる地域になるよう、努力していきます。
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