■『ネット社会における部落差別と人権』をテーマに「第3回人権講座」を開催
文化会館では、同和問題をはじめ、あらゆる差別や人権侵害をなくし、お互いの人権を大切にするまちづくりを目指して、年5回の人権講座を実施しています。8月28日(水)に第3回目の人権講座を開催しました。
■DVD「大切な人」を視聴
今回の学習テーマは『ネット社会における部落差別と人権』です。啓発ビデオ「大切な人」(令和5年度兵庫県人権啓発ビデオ)を視聴し、その後、町人権啓発指導員の岡本潔政氏(浜坂北小学校長)の講話で学習を深めました。
現代社会におけるインターネットは利便性が高く、SNSや動画投稿サイトなどを通して自由に意見表明することができるのが特徴です。一方で、インターネット上では他者からの評価が自身の評価と誤認し、部落差別・外国人差別といった偏見や差別を助長するような情報を発信する行為が見られます。ときに投稿者自身も、第三者から誹謗中傷を受けることがあり、現在深刻な人権問題となっています。
インターネット上の一部の情報が、誤った認識や差別意識を助長すること、表現の自由を逸脱した許されない行為であると気づく大切さ、差別されている当事者が訴え続けるという負担を強いる社会構造の実態について理解するとともに、差別のない社会、誰もが一人の人間として尊重される社会の実現を目指すことを目的としてこのドラマは制作されています。
■岡本潔政さん(人権啓発指導員)の講話
今日の学習テーマは「ネット社会における部落差別と人権」です。
ネットの便利な部分はたくさんあります。ニュース、天気、株価などの情報を瞬時に得ることができる、様々な方法で人とつながることができる、誰でも簡単に情報を発信し共有することができる、買い物など自宅にいながら多くのサービスを受けることができるなどです。また、ネットの危険性の部分もたくさんあります。個人情報の漏洩やアウティング、プライバシーの侵害、ネット詐欺などの犯罪の増加、信頼性の低い情報やデマが多い、人間関係が希薄になり孤独感を感じる人が増えているなどです。
次に、部落差別について考えてみます。
令和5年に実施した人権に関する新温泉町民の意識調査では「現在、新温泉町において部落差別はありますか」という問いに30%の人が「ある」と回答し、「人権尊重の社会では許されないことであり早急に解決しなければならない」と60%の人が回答しています。
いったい部落差別とは何でしょう。「部落差別」とは「被差別部落・同和地区」などと呼ばれている地域の出身であることやそこに居住していることで、日常生活や結婚・就職などの場面で現在もなお差別されているという日本固有の差別問題であり、何の根拠や理由も違いもない差別であり、人種や性的少数者等の差別とは異なるものです。
部落差別の歴史を考えます。部落差別の起因は仏教思想にあったとされる「穢れ意識」です。「死穢れ」「産穢れ」「血穢れ」が「3大穢れ」と言われており、「穢れは伝染する」とも信じられていました。現在の女性差別も「産穢れ」から起因してします。「部落差別」は、何の違いもない、何の根拠もないという特殊性による理不尽な差別であり、差別をする人がいる限り差別の連鎖が形を変えて続いていきます。
最近では、ネットによる部落差別が多く見られます。同和地区がどこかを暴くサイトや同和地区を撮影して写真や動画を掲げるサイトです。また、被差別部落出身の芸能人や有名人を暴くサイトもあります。
今、インターネット上では差別情報の収集・強化・発信が繰り返され、差別が再生産されているといえます。そして、個人のプライバシーの侵害が日常的に起きているといえます。誤った情報で寝た子は静かに起こされ続け、部落差別がエスカレートしている状況にあります。
私たちは、ネット情報を無批判に受け入れることなく、インターネットへの正しい向き合い方(使い方、モラル、利便性と危険性)や「部落差別の正しい知識」を学び続け、それらをもとに批判的に情報を見つめ、差別情報を見極め、差別情報の発信に気づける人権感覚を養うことが大切です。
そして、部落差別を学ぶことはあらゆる人権課題を解決する社会の実現を目指すことにつながると考えています。
問合せ:新温泉町文化会館
【電話】82-3328
<この記事についてアンケートにご協力ください。>