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野草散歩(166)

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兵庫県新温泉町

■ジャコウソウ(シソ科)
数年前の事です。深山の山道を数人の仲間と行く中で、前の人に遅れないよう、それでも滅多にない深山歩き、見知らぬ植物に出逢えないかなと期待しつつ、キョロキョロと周囲を見ながら歩いていました。平坦な道に差しかかって間もなく、小さな水辺に突然現れた花の群落。ホタルブクロのような赤紫色の花が斜面に長い枝を垂らしていました。それまで見たこともなかった花。それがジャコウソウ(麝香草)との出会いでした。名前のようにジャコウの香りがするのかな、と思ったのは名前を知った後のことで、文献によると香りは無いようです。
ジャコウソウは日本の固有種でシソ科の多年草。高さは80~120cm、根元は木質化して堅く、茎は細くて長く、断面は稜(りょう)のある四角形であまり分枝はせず、斜めに傾けるように何本も立ち上げています。葉は長さ10~30cm、幅3~10cmの狭卵形で先は尖り鋸歯縁(きょしえん)となって対生しています。葉の基部は丸くなって切型(真横に切ったような形)か耳型(基部の両端が膨れている)になり、花は短い花柄があり、上部の葉腋から1~3個がつきます。萼(がく)は鐘形で長さ15~18mm、花は4~4.5cmの紅紫色、形は袋状の唇形で上部は2裂、下部は3裂、花の開口部はやや白くなっています。花後、種の成長と共に萼が膨らみ、熟した後に種を落とします。ジャコウは漢字で麝香とあるように、ジャコウジカの雄からとれる香料の事で、かつては高級な香料や薬として利用されていたそうですが、現在、ジャコウジカは絶滅危惧種であり、香料をとることは禁止されているそうです。伊吹麝香草(イブキジャコウソウ)やハーブのタイムなどは属も外見も異なりますが、こちらは良い香りがするようです。
文・写真 中澤博子さん

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