■明神鳥居と鹿島鳥居
お正月といえば初詣(はつもうで)に行かれた人も多いのではないでしょうか。日本人はよく無宗教と言われますが、宗教を意識していなくとも、お正月には神社に初詣に行く風習が根付いています。
神社に行くと必ず目にするものの一つが鳥居です。大きな神社だけでなく、小さな祠(ほこら)でも鳥居が建っていることもあります。神社を表す地図記号にもなっているほど鳥居は神社と関係性の強いものです。
但馬国(たじまのくに)一ノ宮といわれる粟鹿(あわが)神社には大きな石製の鳥居が建っています。実は鳥居にもさまざまな種類があり、粟鹿神社の鳥居は『明神鳥居(みょうじんとりい)』と呼ばれるタイプです。この鳥居の特徴は一番上の横木は2本の長方形(笠木(かさぎ)・島木(しまぎ))を重ねたもので、左右の端は上方向へ反りがあります。そして両端は斜めになっています。上から二番目の横木(貫(ぬき))は柱を貫通して飛び出し、柱と横木を固定する楔(くさび)が付いています。一番上の横木と二番目の横木の間に額束(がくづか)という短い柱があり、ここに神社名を記した扁額(へんがく)が掛けられています。左右の柱はやや傾斜しており、柱の下には礎石(そせき)(亀腹(かめばら))があります。明神鳥居にもバリエーションがあり、山東町にある當勝(まさかつ)神社の鳥居には一番目の横木の上に屋根が付いています。鳥居は木製で、全体が赤色に塗られています。
明神鳥居は最も一般的なタイプの鳥居で、神社で目にする機会も多いでしょう。では市内には明神鳥居ばかりかといえば、別のタイプの鳥居も存在しています。それは和田山町にある二宮(にのみや)神社の境内にある稲荷(いなり)神社に建てられた鳥居で、これは『鹿島鳥居(かしまとりい)』と呼ばれるものです。明神鳥居との違いは、一番上の横木(笠木)が1本の円柱で作られていること、一番目と二番目の横木の間に額束が存在しないこと、左右の柱は傾斜が無く垂直に立てられていることです。これが茨木県の鹿島神宮の鳥居に代表される鹿島鳥居の形です。
一方で『お稲荷さん』といえば赤い鳥居というイメージがあるように、稲荷神社の鳥居は全体を赤、柱の足元を黒く塗ったものが建てられます。そのため二宮神社境内の稲荷神社に建つ鹿島鳥居も赤と黒のツートンカラーに塗られています。本来、色を塗らない鹿島鳥居が赤と黒に着色された稲荷神社用の鳥居になっているという面白い例です。
神社に行くと何気なく通っている鳥居ですが、意外と種類が豊富に存在します。初詣に行った神社に立っていた鳥居はどんな形をしていたでしょうか。神社へ参る時、鳥居の形に注目してみると面白い発見があるかもしれません。
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