市内各地で進む、まちの再整備。一見、古くなったものを単純に建て替えているだけのように見えて、実は、神戸全体の未来を目指して、それぞれ整備されています。その未来像とは何か?久元市長が答えます。
■教えて市長!自然と共に生き、ゆとりある人間らしい暮らしのできるまち
◆新しい価値観に合った神戸へ
◇市が目指す「海と山が育むグローバル貢献都市」が、意味するところを教えてください
どこの都市でも通用する言葉ではなく、誰が見ても「神戸のこと」だと分かる言葉で2つの願いを表しました。まずは、海と山に象徴される神戸の自然を大切にし、自然と共にある人間らしいまちでありたいということ。そして、震災の経験と知見を生かした防災分野と、医療産業都市での健康分野において、ほかの地域やグローバル社会に貢献できるまちでありたい、ということです。
◇具体的には、どんなまちを目指すのですか?
都心・郊外・下町・農村と、神戸は多様な顔をもつまちです。計画的なまちづくりをしなければ、都心に人口が集中して過密になり、郊外や下町、農村は衰退していくでしょう。そうならないために、市内の人口をバランス良く保ち、発展するよう計画を立てることが大切です。また、作家・陳舜臣(ちんしゅんしん)さんが震災直後に「自然が溢れ、ゆっくり流れおりる美わしの神戸よ※」と書かれたように、時間に追われず、ゆったりとした暮らしや生き方が神戸には似合います。コロナ後に見直された、このような価値観に合ったまちを目指したいと考えています。
◆再整備で描く未来と願い
◇郊外の駅前が、どんどん新しくなっています
名谷、垂水、西神中央といった主要駅は、長年まちの姿が変わりませんでしたが、リニューアルを進めています。買い物や医療、文化、スポーツなど暮らしが完結する生活圏に、働く場所もプラスして、ベッドタウンからの脱却を目指します。また、すぐそばに海や山があるので、新鮮な農水産物を味わったり、茅葺(かやぶ)き民家を活用したり、自然と共生するライフスタイルを楽しむこともできます。
◇次に、三宮の再整備についてお伺いします
神戸の玄関口である三宮が抱える大きな問題は、6つの駅がうまくつながっていないことと、市民ですら目的地に行くバスの停留所がどこにあるか分からない状況です。解決に向けては、駅の乗り換えを分かりやすくする、バスの停留所を集約する、といった再整備を通じ、6つの駅がひとつに感じられるような利便性を生み出していきます。
◇目指す三宮の姿を教えてください
「人が優先のまち」「歩いて楽しいまち」を目指します。三宮は駅前の通過交通量を減らし、歩行者優先のまちに変わります。サンキタ広場や東遊園地のリニューアルにより、ウォーターフロントや元町、北野などを、楽しく歩いて巡れるようにつなげます。そして、市内の人口バランスを取るという観点と、都心部を無機質な風景にしてはいけないという考えから、タワーマンションの規制をかけました。にぎわいがあり、あたたかみのある都心のビジョンを描いています。
◆明日の神戸を、皆さんと共に
◇他エリアのまちづくりはどう進めますか?
市内の多様なまちの良さを、適切に手を入れて未来へ引き継ぎます。商店街での買い物や、銭湯や飲食店でのやりとりに人情味があふれる下町は、空き家の活用やミニ緑地を作り、シタマチスタートアップの力も入れて強く面白いまちへ。六甲山では、遊休化した別荘や保養所を、オフィスやコワーキング、新しいタイプの宿泊施設にするといった、六甲山上スマートシティ構想が進んでいます。
◇市民にメッセージをお願いします
まちづくりは、行政だけの力では進められません。多様な人々が連なりながら関わっていただくことで、まちの魅力はさらに高まります。「人間らしいまち・神戸」が、将来にわたって存在できるよう、市民のみなさんと一緒につくっていきましょう。
聞き手・文:広報戦略部
取材協力:東遊園地「WEEKEND」
※「神戸新聞」1995年1月25日朝刊掲載陳舜臣『神戸よ』より引用
※今月号の特集の画像は、完成予想図やイメージなど、今後変更する場合があります。
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