神河町史編集員(民俗担当)西尾 嘉美
■3.その他の共同体の民俗行事
お寺で行われるお盆の施餓鬼供養、神社の祭礼以外にも、地域内にあるお堂や祠、路傍にある塚などでもおまつりが行われます。
例えば、8月のお盆過ぎ、地蔵菩薩の縁日の24日か前日の23日に、地蔵菩薩の祀られるお堂で法要が行われます。京阪神など関西を中心に、街角の地蔵祠の前で提灯を灯し、供物のお菓子を子供たちがもらいに来るという風景を各所で見ることができます。神河でも、地蔵祠の前に提灯を灯し、読経や大きな数珠を皆で取り廻す「数珠繰り」が、越知・粟賀町・中村・吉冨などいくつもの集落で行われました。
社寺などの特定の場所はなくても、定期的に集まって行われる「講」という行事があります。伊勢神宮のお札をいただいたりお参りしたりする集まりを「伊勢講」といい、かつては大半の地区にありました。
伊勢講は毎月や隔月で「営み」があり、講に参加する講員が当番の家や集会所に集いました。伊勢講では、それぞれがお金を出し合って、伊勢神宮の大麻(神札)を受けたり、代表者がお参りする代参や皆でお参りする総詣りの外、観光地への旅行なども行われ、皆の親睦の場でもありました。近年、少しずつ講員が減ったり、感染拡大の影響で中止になったりしたことから、
伊勢講の解散を決め、最後の営みである「終い講」を行うところも出てきました。伊勢講以外にも、庚申講・愛宕講・大師講などが日本各地にありますが、講を続けることが難しくなってきているのは、神河だけではありません。暮らし方が変わり、伝統的な行事を続けるのが大変になっている状況であることを示す事例です。
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