みのり会館では、同和問題をはじめとして、子ども・高齢者・障がい者・外国人などの人権問題の解決を目指して学習会や講演などを実施しています。その内容を紹介します。
■「部落差別のいま~これからの人権教育・啓発を考える~」
講師:部落解放同盟兵庫県連合会書記次長北川真児さん
◇全国水平社創立から101年
明治の解放令後、生活や環境の改善を求める部落改善運動が起こりました。しかしその中で、差別の原因が、差別される側にあるかのような取り組みがなされたことに問題がありました。それでは差別はなくならないと、当事者が自ら立ち上がったのが全国水平社です。
水平社宣言は、差別によって歪められてきた自尊感情を回復し、人間の尊厳を取り戻そうと訴えるもので、「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と結ばれたこの宣言は、日本初の人権宣言といわれています。また、被差別マイノリティが発信した世界初の人権宣言としても評価されています。
その後、第二次世界大戦を経て、同和対策関連の法律のもと、同和対策事業が本格化していきました。
◇部落差別解消推進法の施行から7年
法律上で、部落差別の存在が認知されました。部落差別の解消は国の責務、地方公共団体の努力義務であると明記され、相談体制の充実、教育と啓発の実施、部落差別の実態の把握に取り組むことも明記されました。
◇部落差別の現状
部落差別は、封建時代の被差別身分に「系譜的」なつながりがある人に対する差別ですが、土地に対する差別の性質も併せ持ちます。土地が「目印」になるのが現代の部落差別の特性です。
本格的なインターネット時代の到来と共に、差別事件が公然化・悪質化しています。インターネットは圧倒的に多くの人の目に触れられてしまいます。悪質な情報への接触が「部落差別との出会い」となり、差別を助長します。インターネットの情報には、各自の正しい判断と、どう活用していくのかを考えていくことが必要です。
◇これからの人権教育・啓発を考える
厳しい差別ほど「見えにくい」ものです。当事者からの告発は「さらなる差別」を受けるリスクを伴います。そうした差別の力が「差別の現実」を見えにくくします。
多くの人は差別問題を「自分に関係のないこと」と感じ、自らを「中立な立場」と捉えがちです。この意識そのものが、差別的な社会の構造を支えてしまうことになります。自分にも関わる問題として考えていくことが大切です。
差別をすることで大切なことを失う場合がある、差別をすることはつまらないものという考え方を啓発したいと思います。
いわゆる「寝た子を起こすな」という考え方は、部落差別解消への大きな壁になります。教育・啓発をしないということは、「部落問題を知らなくなる」ということではなく、「部落問題を差別的に知ってしまう」ことにつながります。
◇まとめ
差別する意識はなくても、無意識に人を傷つけている場合もあります。人は、無意識に差別してしまう恐れがあることを理解して、人権感覚を常にアップデートしていくことが大切です。差別を見たときに、当事者のみならず当事者以外が声を上げることが力になります。誰もが能動的に学んでいく必要があります。
社会や人権の定義も変化していきます。人権を学ぶことは楽しいことで、心を温かくします。学校教育や社会教育で繰り返し学んでいきましょう。
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