■豆炭あんか 487回
本紙写真の資料は、「豆炭あんか」と呼ばれるもので、火をつけた豆炭を中に入れて使う道具です。寒い季節になると布団の中に入れて暖をとりました。豆炭1個で一晩中暖かさが続き、とても重宝しました。まれにあんかを入れた袋の口が開いたり布が薄くて、足に低温やけどの水ぶくれができたりすることもありました。
「豆炭あんか」が家庭で使われはじめるのは、豆炭が発明された大正時代以降になります。豆炭は、大正9(1920)年に川澄政によって発明されました。これは欧州で作られていた成形石炭を改良し、複数の石炭の粉末と消石灰・コークス・木炭などを混ぜて、豆状に成型して乾燥炉で焼成して作ったものです。
倶知安町での「豆炭あんか」の普及について詳細はわかりませんが、昭和36(1961)年発行の倶知安町史によると、町内での石炭の販売は、大正13(1924)年に高橋収蔵が石炭屋をはじめたのが始まりとあり、「豆炭あんか」もこれ以降、町内で普及していったと思われます。昭和も50年代になると、家庭で電気あんかや電気毛布が普及して、豆炭あんかは使われなくなりました。
風土館には、豆炭あんかをはじめ、湯たんぽや炭火あんかなど、各種暖房器具も展示していますので、皆さんの思い出を教えていただけるとうれしいです。
文:今井真司(倶知安風土館学芸補助員)
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