◆特別企画 相澤要教育長に聞く
「教育政策における“ウェルビーイング”」
~子どもたち一人一人、そして全ての町民が 幸せで満ち足りた生活を送るために~
(聞き手)国の新たな教育振興基本計画(※1)に「ウェルビーイング(※2)」という言葉が登場しました(※3)。「個人も社会も幸せで満ち足りた状態」という意味だそうですが、本日は、この「ウェルビーイング」について、教育長のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
(教育長)「ウェルビーイング」は、経済的な指標に代わる社会的な幸福を測る指標としても注目されています。日本は戦後、高度経済成長を遂げ、今日のような物質的に豊かな暮らしが実現しました。その背景には教育の成果も大きかったと思いますが、一方で、学校現場では校内暴力、そしていじめや不登校の問題などの様々な事態が起きてきました。「金八先生」というドラマがありましたが、あのドラマはシリーズごとに、そうした問題を追い続けていましたね。
「ウェルビーイング」とは、個人の幸せだけでなく、みんなの幸せ、地域の幸せのようなものも含んでいます。一人一人の成長が地域全体の活力にもつながるといったイメージでしょうか。私は、そのための学びを大切にしたいと思っています。
(聞き手)自分だけテストで100点が取れればいいわけではないということですね。では、教育長としては「ウェルビーイング」を向上させる教育をどう実現させるお考えですか。
(教育長)じつは、別海町の「学びの木」は、まさに「ウェルビーイング」の発想で作られた、別海町としての教育振興の基本だと思っています。本町において、30年以上前からこうした発想で教育を推進してきた先達の叡智に改めて畏敬の念を覚えますし、それを大切にしてきた別海町の教育行政の長として携わる責任の重大さを感じています。そうした思いもあって、私は昨年2月の教育長就任当初から「学びの木」を大切にして教育行政や教育活動を進めてほしいと強調させてもらっています。
また、本町の教育行政執行方針は、第一に社会教育、第二に学校教育を示しています。もちろんどちらも大切で、前後や軽重があるというわけではないのですが、生涯学習の観点から、人生100年時代を俯瞰した方針として示す上でも、また「ウェルビーイング」の考え方からも理にかなっていると思っています。
さらに、近年、幼児教育の重要性が謳われているように、非認知能力(テストなどの数値として目に見えない能力)である意欲や協調性、自制心とやり抜く力、自己肯定感などの力を育むことを大切にするのも「ウェルビーイング」の向上には極めて大切です。決して奇をてらった策を打つのではなく、ある意味「当たり前」のことを地道に、町民みんなが当事者となって取り組んでいきたいですね。
(聞き手)幼児期からの英語の早期教育のようなものや、いわゆる詰め込み教育と呼ばれるようなものは、「ウェルビーイング」の向上とは正反対のものだということですね。
(教育長)もちろん、例えば英語に興味を持った幼児に、その関心に応じて適切な学びの機会を与えることも重要ですし、丸暗記だってそのこと自体が悪ではないのであって、そこは二項対立のような議論にならないよう心がけたいですね。大切なのは「生き方、在り方」を見出す学びの機会を創り出すことなので、子どもたちはもちろんのこと、全ての町民が、互いの「学び合い」の中から「ウェルビーイング」を向上させることができるような教育行政を推進していきたいと考えています。
そのために、「ふるさとキャリア教育」発祥の秋田県大館市の実践などを参考にしながら、別海町全体を「学びの舞台」、また全ての町民を「先生」と位置づけるイメージで、町内全体に「学び合い」が起きるよう、ダイナミックに展開していきたいですね。
(聞き手)自分の「生き方、在り方」を考えることができれば、子どもたちは「何のために学ぶか」を自覚できるということですね。子どもたちが「学ぶこと」のよさや楽しさを実感してワクワクするような日々を重ねて成長していってほしいと、私も思います。私も一町民として「地域の子どもは地域が育てる」ということを考えながら、また、自分自身の学びも大切にしながら生活していきたいと思います。本日は、ありがとうございました。
※1「教育振興基本計画」:教育基本法に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため政府として策定する計画。
※2「ウェルビーイング」:Well-being(ウェルビーイング)とは、Well(よい)とBeing(状態)が組み合わさった言葉で、経済的な豊かさだけではなく、心が満たされ健康的な生活が送れる状態を表す概念。
※3(教育振興基本計画の総括的な基本方針として、次のように記されている)我が国の教育をめぐる現状・課題・展望を踏まえ、本計画では2040年以降の社会を見据えた教育政策におけるコンセプトとも言うべき総括的な基本方針として「持続可能な社会の創り手の育成」及び「日本社会に根差したウェルビーイングの向上」を掲げる。両者は今後我が国が目指すべき社会及び個人の在り様として重要な概念であり、これらの相互循環的な実現に向けた取組が進められるよう教育政策を講じていくことが必要である。
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