■三.地域との持続可能な教育活動の実現
将来的な人口減少が可視化され、地域と学校を取り巻く課題も多様化・複雑化し、学校だけでは解決が難しい課題は地域との連携を一層深めることが必要です。本町ではいち早く学校運営協議会(コミュニティスクール)を立ち上げ、その成果は地域ボランティアとして教育活動に携わったり、総合的な学習の時間との関わりや登下校時の見守り、さらには職場見学などの学習活動に参画していただきながら情報発信を行っております。
また、自然災害が頻発する中での子どもたちの防災活動は、有事の際の自らの行動や与えられた知識ではなく「自分事」としての防災意識を養うことが重要であることから、関係機関と連携を深めながら「一日防災学校」の充実に努めます。
国の指針による中学校の「部活動地域移行」は、令和七年度までに休日での活動を段階的に移行できるよう、他の市町村でも検討の取組が進められ、その多くの課題は指導者の確保とされており、地域クラブ活動として運営方針を決定した自治体が少数に留まっている中、本町では昨年「地域移行協議会」を設置し、ニーズ調査をはじめとする検討協議を進めてきました。
これまで生徒数が減少する中でのスポーツ系の部活動の主体は、バドミントンと卓球の個人競技のほか、中体連などの試合では合同チームを想定した鴛泊中学校サッカー部が活動をしています。
特に鬼脇中学校ではこれまでバドミントン種目のみの活動であったため他種目の選択肢がなく、全生徒が所属し活動を続けてきましたが、ニーズ調査の結果や地域からの熱い声を踏まえて、これまで少年団活動をしてきたサッカー種目を新たに設置し、鴛泊中学校との合同チームとして部活動顧問や地域指導者のもと、平日も含めて地域に移行することで、中体連への出場や「地域クラブ」として登録することにより、他の大会への出場の機会が増え、生徒の競技の機会と主体的な参加の活動を通した自主性や豊かな心の育成に寄与でき、指導者も確保できることから、令和六年度よりサッカー部を一部種目として地域へ移行する運営方針を決定したところです。
この運営方針の決定は、宗谷管内ではまだ事例もなく、道内でも実施を決定している市町村も少ないことから、モデル事例として立ち上げの課題解決にも貢献できるものと推察しつつ、他の種目についても令和七年度までに当協議会において協議を続けることとしております。
また、部活動の地域移行を含めた取組は、新たに策定した本町の「学校における働き方改革」アクションプラン3.(二〇二四年度〜二〇二六年度)として、教職員の業務改善による子どもの指導や教材研究、教職員の資質・能力として、その向上に努めて参ります。
■四.生涯学習と社会教育の充実
将来のまちづくりを担う子どもたちをはじめ、町民が学び合う喜びや、自ら学び続ける意欲を高めることができるよう、芸術・文化体験やふるさと教育等の生涯学習事業を推進します。
そのため、「利尻富士町生涯学習推進計画(二〇二一〜二〇三〇年)」における「学びあい」「ふれあい」「活かしあい」を基本目標とした一人ひとりが学習を積み重ねる中から、地域に関わりを持つことや住民相互のふれあいを広げること、学んだ成果を様々な活動やボランティア活動で活かすことを通じて、地域の中で居場所や出番を獲得し、他者のためになっているという自己有用感を感じ取ることなど、推進計画を理念とした事業をさらに充実させていきます。
これまで子どもたちの放課後の安全・安心な居場所づくりと体験活動を通じた「放課後子ども教室」や「チャレンジ教室」は学校と家庭・地域の連携を図りながら指導員の熱心な活動が多くの世代へと引き継がれ、中学生や利尻高校生がその指導活動に加わり成果として表れていることから、継続して実施して参ります。また、スポーツへの親しみは心身ともに明るく健康で豊かな生活の実現につながっていくことから、関係団体への支援とともに事業の運営方法を時代に応じた効率的で充実した内容へとリニューアルしていきます。
さらに子ども同士の交流が育めるように町外との子どもたちの交流事業やリーダー研修などの事業やこれまでも実施してきた利尻島遊覧飛行を継続し、「ふるさと教育体験事業」として郷土の愛着を育むとともに航空教室を通じた職業知識を醸成させます。
文化・芸術は人々の創造性を育むものであるとともに、他者との共感や相互理解を促すなど、地域社会の基盤の形成につながることから、まちの歴史や芸術・文化に触れる機会の提供、文化財の調査・保護、文化・芸術活動を行う団体への継続的な支援と町民の活動への参加を図るとともに活動内容についてもインターネット上でも公開できるよう工夫して参ります。
これらのように地域に潜在する人的・物質的資源を活用し、放課後や土曜日等を活用した社会教育と学校との連携は、これからの社会を創り出していく子どもたちが、社会や世界に向き合い関わり合い、自分の人生を切り拓いていくために求められる資質・能力として培われ、地学協働として自立した地域社会の基盤の構築と活性化につながります。
利尻高等学校に商業科が設置されて以来、商業科目で培われた学力は社会に貢献できる力としてこれまで多くの生徒を送り出し、六十二年余りの長い歴史が令和六年四月から普通科一間口となり途絶えますが、利尻高等学校との系統的かつ組織的な教育活動による接続性と深い連携は、小・中・高十二年間を見通した地元での多様な力を身につける学びとして、引き続きこれまでの特色ある商業クラブ活動への支援、ふるさと教育事業やキャリア教育への助成など、地元利尻高校での学びの継続として引き続き支援を行って参ります。
次代の社会を担う子ども一人ひとりを社会全体で応援するため、子育てにかかる経済的な負担の軽減や安心して子育てができる環境整備が総合的に進められている中、育英資金貸付事業や準要保護世帯への就学援助費支給をはじめ、修学旅行費や学校トイレへの生理用品の設置など各種支援と同時に、現下の物価高騰を踏まえた学校給食費の完全無償化を引き続き町の財源により保護者負担へのご高配をいただけますことは、義務教育における全ての子どもたちに平等で栄養バランスのとれた学校給食を提供でき、子どもの健康や学習機会が損なわれない制度として深謝申し上げるところであります。
■おわりに
以上、教育行政の推進方針と主要な施策について申し上げました。
来る令和六年度は改定された各種計画の実行管理のもと、確実に成果につなげる施策として深化させ、すべての教育活動を学校、家庭及び地域はもとより、関係機関や団体等との連携を図りながら、本町教育のより一層の充実及び発展に全力で取り組んで参ります。
以上、町議会議員の皆様並びに町民の皆様のご理解とご協力を心からお願い申し上げ、教育行政執行方針といたします。
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