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小さな本屋のひそひそ話 第8回

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北海道大樹町

■古書だけの魅力もある
前号では古書を売らない理由について紹介しましたが、古書ならではの魅力も、もちろんあります。あたりまえですが絶版になった本は、古書でしか手に入れることができません。欲しかった本を手にいれる最後の砦が「古書店」です。
前回も写真を載せましたが、私は古い「暮しの手帖」と暮しの手帖社から出版された本を蒐集(しゅうしゅう)しています。暮しの手帖は「もう二度と戦争を起こさないために、一人ひとりが暮らしを大切にする世の中にしたい」という強い信念のもと、初代編集長の花森安治によって創刊された現在も続く由緒ある雑誌です。
当時の暮しの手帖には「商品テスト」という目玉企画がありました。豊富な商品が出回りはじめ、粗悪品も多く混在した高度成長期に編集部が実際にさまざまなメーカーから出ている商品を購入して試し、優劣を読者に示すというものです。石油ストーブやベビーカー、乾電池や食器用洗剤など、徹底して何度も使い続け、どこに媚びることもなく、正直に結果を公表する姿勢は、顔色ばかりを伺い、忖度が横行する現代のメディアでは考えられない企画でした。
1955年に暮しの手帖社から出版された『古い国からの新しい手紙』も実に良い本です。日本人の海外渡航が自由化されるずっと前に、デンマーク人記者がヨーロッパの暮らしぶりを手紙形式で紹介するという連載をまとめた本です。外国がうんと遠かった当時、暮しの手帖の読者はこれを読んで、どれだけ想像力を膨らませたことでしょう。
ずっと探していた本のなかで最近購入できたのが『ステラおばさんのアーミッシュカントリーのお菓子』という本。日本全国に多数の店舗があるステラおばさんですが、なんと実在の人物なのです!ステラおばさんが長い間大切にしまっておいた宝物のレシピを公開しています。
出版社は現行本の在庫が切れたときに「もう一度印刷するか」の選択を迫られますが、現在、原材料や物流費の高騰で出版業界でも価格改定の波が押し寄せています。印刷しても売れ残ってしまうことを今まで以上に避けたいため、これからは絶版になる本がどんどん増えていくと予想されています。皆さん、欲しい本は、欲しいときに買ってください。二度と手に入らなくなってしまうその前に。

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