●暮らしの違いがもたらす影響について
天塩町の皆様、はじめまして。今年4月から着任しました、臨床検査技師の中園と申します。3月までは鹿児島の民間病院で勤務していました。現在はさほど北海道と九州との暮らしの違いを感じてはいませんが、これから先に訪れる未知なる冬の暮らし方にワクワクしています。
着任間もないこの時期に「病院だより」を担当させていただくことになりました。せっかくですので、鹿児島とはどんなところか、土地柄発生しやすいといわれる疾患、また暮らしの中での疾患との付き合い方の違いなどをお伝えできたらなと思います。
まず、鹿児島県民は北海道に多大なる憧れを抱いています。鹿児島県の地元デパートで年に数回行われる北海道物産展では、道主催の物産展として売り上げ日本一を30回以上記録しているそうで、そのことからもお判りいただけると思います。新型コロナ流行前は、イベント会場が押し合いへし合いで身動きが取れなくなるほどでした。
鹿児島市内から見ることのできる「桜島」はかつてその名の通り島でしたが、大正3年の大噴火により大隅半島とは陸続きになりました。鹿児島市内からは24時間運航のフェリーにて15分程度で行くことができます。活火山で今でも頻繁に噴火しており、距離の近い鹿児島市内では散水車による水撒き(空気中に灰が舞い上がるのを防ぐ)を目にします。また、無料で配布される黄色の「克灰袋(こくはいぶくろ)」に降灰をまとめ、ごみステーションならぬ降灰ステーションに置いておくと、専門業者により回収されます。
降灰による健康障害として、体内に灰が入ることで発生する呼吸器疾患、眼疾患、皮膚疾患や、降灰により周囲が見えにくくなるため交通事故の増加など2次被害の可能性も高まります。
そのような大変な面もありますが、雄大な桜島は鹿児島のシンボルであり、県民に愛されています。
さて、皆様にとって鹿児島は南国であり、夏は暑いけれど冬は暖かく過ごしやすいイメージがあるのではないでしょうか。
確かに夏は酷暑です。紫外線対策をしないで外出すれば、わずかな時間でも皮膚がヒリヒリしてきます。エアコンの風が苦手な高齢者の方が、自宅で倒れ脱水状態で救急搬送されてこられるのもこの時期です。温暖化が進んでいる現在は、夜もエアコンを稼働させている家庭が多いようです。
一方冬についてですが、「鹿児島の冬は北海道に比べて寒い」の一言に尽きます。もちろん気温については北海道の方が低いですし、鹿児島では降雪は年に数回程度、積雪ともなると数年に一度レベルではあります。しかし、鹿児島は冬季の室温が低い傾向にあります。起床時の室温が10度を下回ることも珍しいことではありません。ある統計によれば、鹿児島の冬季平均室温は16度前後と言われているようです。WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、冬の室温は18度以上を推奨しており、下回る場合は血圧の急激な上昇、いわゆるヒートショックのリスクが高まると警告しています。実際鹿児島県は脳血管疾患による死亡率は全国平均を超えています。脳血管疾患の発症には様々な要因が複雑にからみあっていますが、室温の低さも原因のひとつである可能性が指摘されています。
また、室温が低下すると活動量も低下する傾向にあります。ある糖尿病専門医から、雪国に住む患者で日常的に雪かきをする方は冬季の血糖コントロールは良好だが、九州ではその必要がないことやお正月などいつもと違う食事生活により冬季に悪化するケースが多いということを聞きました。土地によって生活様式も様々です。天塩の皆様がどのような生活をしているかを知ることで、よりよい医療を提供したいと思っております。機会がありましたら是非、天塩の暮らしについて色々お教えください。
(文責:中園 由美子)
お問い合せ先:天塩町立国民健康保険病院
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