■一大産地の覚悟と責任
◆~花きブランドを守る!親子二代で紡いだプライド~
・担い手育成を始めた経緯について、田村昌之さんに聞きました!
北海道指導農業士・北育ち元気村花き生産組合長
田村農園の研修生の受け入れは、6年前に亡くなった私の父・福治郎が始めました。初期投資がかさむ新規就農のハードルを下げるため、広い田んぼや大きな農機具を必要とする水稲と比べて参入障壁の低い花きの分野に絞り、後継者を育成してきました。
人口減少が進む中、花き農家を減らさず、生産量を確保することは、地域のブランド力を維持し、市場での信頼と有利販売につながります。
担い手の育成事業を始めてから9年後の1998年、一期生の男性が2年間の研修を経て独立。2期生、3期生と続き、関東・関西圏から農業に憧れて町内に移住した研修生が次々に新規就農を果たしました。住み込みできる環境から、私の家族より研修生の方が多い年もあり、にぎやかな光景は懐かしい思い出です。
◆北育ち元気村花き生産組合の初代組合長を務めた福治郎さん
・設立10周年記念誌から抜粋
花き生産連絡協議会の設立を経て、平成10年(1998年)に発足した北育ち元気村花き生産組合の初代組合長は、福治郎さんが務めました。
設立10周年の記念誌インタビューでは「当時、北空知には11のJAがあり、一般的に“我が村・我が農協”という雰囲気になりがちなところ、花き生産者においては究極の目的に向かって一心不乱に取り組んでいただいたことが元気村の基礎となっています。花き市場の大型化も組合合併の追い風になりました」と語っています
◆合言葉は「北空知の花はひとつ」
北育ち元気村花き生産組合
・北空知広域農業協同組合連合会花き事業部販売課 課長 白峰真樹(しらみねまさき)さん
JAきたそらちとJA北いぶきの両農協(計11支所)で組織する「北育ち元気村花き生産組合」(231戸)は、主力品目のスターチス・シヌアータを始め、シネンシスやダリア、おもちゃカボチャなど、夏秋期産地としての生産量は道内一と言っても過言ではございません。
北空知の花きブランドには根強いファンも多く、道内2、東北1、関東・関西の計15市場と取り引きしており、全国的に無くてはならない産地として位置づけられております。
ただ、主力品目のシヌアータ、シネンシスの2本柱の作付けは年々減少し、各市場からの注文に対して満足のいく供給ができていないのが現状です。水稲面積の拡大や生産者の高齢化が要因とされていますが、それでもこの数年間、高収益作物の花きは安定的な販売価格を保っています。
作付け面積の減少は、担い手不足が一つの要因とされており、産地のブランドを守り続ける上で期待の大きな取り組みです。
かつて草花の栽培が多かった妹背牛をはじめ、各地域のまとめ役にご尽力いただいた初代組合長・福治郎さんの代から始まった担い手育成事業。いまは現組合長の昌之さんに継承され、花きに特化した研修を経て就農された方もたくさんいます。
花きの部門でみると、深川市や沼田町などでも担い手の育成に取り組まれています。各自治体によって制度の違いはあるかと思いますが、北空知の関係機関が一体となり、手厚いサポートで新規就農者が1人でも増えることを切に願っております。
北育ち元気村花き生産組合の令和4年(2022年)の販売額は約16億3千万円で、過去最高額を記録しました。このうち、道内最大級の生産量を誇るスターチス・シヌアータ、HBSシネンシスの2品目で売上全体の約7割を占めています。
組合で生産する花きの種類を細分化すると、全部で75品目を扱っています。例えば、スターチスを購入したお客様が「この時期はこの花もあったよね」という具合に、同じ産地の花を求めるニーズに応えることで仕入れ状況の好循環を生みます。
地域別の売上でみると、組合管内の11地区で妹背牛町が売上高1位の実績を誇り、全体の2割を超えます。各地区とも組合員数や出荷箱数は減少傾向にありますが、販売額が伸びているのは先代が築いた北空知のブランド力といえます。
コロナ禍は仏花として重宝されるシヌアータの需要があり、他産地と比べて販売額の致命的な落ち込みはありませんでした。
また、外出自粛に伴う在宅時間の増加に合わせて、自宅に花が届くサービスのサブスクリプションが関東圏で人気を呼び、売上を後押ししました。
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