■ワクチン接種、50年間で1億5,400万人の死亡を回避
・富良野医師会 角谷(かくや) 不二雄さん
世界保健機関は1974年に拡大予防接種計画を開始しました。その14種類の病原体に対する50年間の予防接種がもたらした影響を推定した論文がLancet誌に掲載されました。予防接種により1億5,400万人の死亡が回避され、1億4,600万人は5歳未満の子どもで1億100万人は1歳未満の幼児でした。また、9,370万人(60.8%)は麻疹ワクチンによる死亡回避でした。世界の乳児死亡率は大幅に減少しており、その40%は直接的に予防接種によるものでした。相対的な減少率はBCG、DTP(ジフテリア・破傷風・百日咳)、麻疹、ポリオの4種類のワクチンによる予防接種が大幅に拡大された1980年代に特に高くなりました。ワクチン接種が行われなかった場合と比較して、2024年には、10歳の子どもの次の誕生日までの生存確率は約44%、25歳の個人の生存確率は35%、50歳の個人の生存確率は16%高くなりました。
ワクチンは、接種者個人のリスクを直接的に減らすことと、地域社会での感染を減らし、感染症への曝露を減らすという2つの方法で予防効果を発揮します。皮肉なことに、ワクチン接種によって地域社会での感染が減ると、直接的な個人の利益が小さく見えてしまいます。しかし、ワクチン接種率のわずかな低下でも、疾病のリスクが大幅に増加する可能性があります。現在、世界的に麻疹の大規模な流行が再燃しており、これはCOVID-19パンデミックに伴う麻疹ワクチン接種率の低下が原因です。ソ連崩壊後、ジフテリアがロシア・東ヨーロッパで流行し、5,000人以上が死亡しました。苦労して得た成果は簡単に失われてしまう可能性があるため、地域社会が予防接種に継続的に取り組むことが極めて重要です。そして、特例臨時接種が終了し、今後は自己負担が生じるCOVID-19ワクチンについてもあてはまるでしょう。
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