8月号では、岩内大火の概要についてお知らせしました。
今月号では、「もはや再起不能」とまでいわれた本町が、奇跡の復興を遂げるまでの道のりの一端をご紹介します。
◆復興計画
・街路整備~交通の利便性、円滑な消防活動はもとより、保健・衛生の観点からも、十分な道幅と歩道等を備えた街路の整備
・土地区画整理~土地と関連する道路について精査し、新たな配置を決定
・公園の配置~幼児童の遊び場と防火の観点からも、できるだけ多く公園を配置
・準防火地域指定~火災が発生した場合、被害を最小限に食い止めるため、建築物に建築基準法上の制限を加えられる区域を設定
◆驚異的早さの理由
・昭和27年から大火前までの3か年で、「市街現況図」を完成させていて、焼失前の複雑な土地・建物等の権利関係が明確に把握できていたこと
・戦災による復興区画整理をはじめ、多くの経験がある実務者や換地設計技術者がいたこと
・いちばん大きな要因は、一刻も早い復興を願う町民の方々の理解と協力があったこと
※こうした条件のもと、換地設計は2か月あまりで終了することができました。
◆新たな課題
驚異的な早さでの復興途上にあった本町では、日々充実する街並みや公共施設が増える一方、長期にわたって町政運営上重くのしかかる事態が現れます。
・多額の負債~大火直後から建設が始まった公営住宅は、918戸となりました。建設費の4分の1は町負担であり、その償還と維持管理費に相当の費用負担が必要となりました。さらに、使用料(家賃)や税などの滞納が増え、大きな問題となります。町は対策として、広報での啓発や「納税貯蓄組合」の設立と加入促進に力を入れることになります。
・生活保護世帯の増加
・青少年犯罪の増加~全道的に増加傾向にあった青少年による犯罪でしたが、本町では、発生原因の一つが、「夜間の外出」にあるとし、青少年の帰宅を促すため、帰宅時間である21時に「愛のサイレン」の吹鳴を始めます。
◆真の復興
そうした中、当時の山本町長は、広報(昭和32年1月号)の年頭の挨拶で、次のように述べています。(一部抜粋)
岩内町の現状は、まさに重大な岐路に立っていると言わなくてはなりません。災害後4年、全道一の規模と2億2千万円の巨費を投じた都市計画も、今年をもって完了し、新しい文化都市岩内町の復興が完成するのは、本年なのであります。形の上では確かに復興致しましたが、しかしそれだけでは必ずしも完全復興とは言いがたいのであります。すなわち、復興した形そのものを運営する人の精神的復興が、今度は更に大切となるのであります。
災害後岩内町は、公私を問わず、ほとんど外部よりの温かい援助の手によって育てられて来たと言っても過言ではありません。形の復興と相まって、今後は少なくとも、外部依存の考えを捨てて、自主独往(どくおう)の考えの下に立ち上がらなくてはなりません。
その考えなくして岩内町は、永遠に繁栄し得ないと思うのであります。
心に深い傷を負いながらも、日々、懸命に生活している町民の方々に対して、十分な行政サービスを提供できないもどかしさと、一方で、苦しい経済状況の中、納税・納付をお願いしなければならない心の葛藤があったことでしょう。この町を大切に思い、住み続けようと努力したそのような人々の想いが受け継がれ、今日の岩内町があるということを、今に生きる私たちは、けっして忘れてはならないのです。
◆お知らせ
・郷土館では、岩内大火の資料を常設展示し、9月7日(土)からは企画展を開催します。詳しくは、本紙10ページをご覧ください。
・岩内大火の貴重映像を見ることができます。「NHKアーカイブス洞爺丸台風」で検索してください。
・武田真一氏の災害と報道についてのお話を読むことができます。「命を守る災害報道武田真一」で検索してください
■岩内大火復興70周年記念式典
日時:9月21日(土)
場所:文化センター・大ホール
※どなたでもご参加いただけます。
〈第1部〉13時30分(開場13時00分)
開式 式辞、来賓挨拶、献花
〈第2部〉14時30分
開会
講演会…武田真一氏
ピアノ演奏…大家純子氏
誓いのことば
閉式 16時30分(予定)
◇講師紹介
武田真一(たけたしんいち)
1967年熊本市生まれ
NHKアナウンサーとして、「ニュース7」、「クローズアップ現代+」のキャスターを勤める。
2016年の熊本地震の年には、「紅白歌合戦」の総合司会を担当
2023年フリーとなり、現在は民放情報番組「DayDay.」のMC
◇講演
阪神淡路大震災での現地リポート、東日本大震災、熊本地震など、多くの災害報道を経験した立場からお話しいただきます。
問合せ:総務係
【電話】62-1011
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