■日本の食を支える
帯広市長 米沢則寿
皆さんは「あの人はスマートだね」と聞いたら、どういう人をイメージしますか。私の母などは「スタイルが良いこと」を指して使っていたように記憶しています。さまざまな機能を有する電話機をスマートフォンと称するように、つまり冒頭の言葉は英語でいうと「あの人は優秀だね」となります。
農業分野においてもロボットやA1.など、先端技術を活用した農業をスマート農業といい、現在、新しい技術による農作業の省力化や高度化が進められています。先日も市内農協に無人トラクターと生育状況を自動判定するドローンが導入され、人手不足への対応や生産性の向上などの課題解決につながることが期待されています。
農業には気象情報は不可欠です。今から132年前、帯広市の開拓の始まりと同じ頃、帯広測候所が晩成社の草小屋を借りて始めた気象観測は、今ではスマートフォンアプリで1キロ四方ごとの気温や降水量などを知ることができる「デジタルアメダス」として道内で先行運用されるなど、気象観測技術も急速に進化しています。
近年、世界中で頻発している災害や気候変動、そして国家間の紛争など、将来的な食料の安定供給を脅かす出来事を目にするようになり、多くを輸入に頼っている日本の「食」をいかに守っていくか、今「食料安全保障」の重要性が高まってきています。言うまでもなく十勝・帯広は国内農業の中でも大きなシェアを持つ食料基地です。この強みを最大限に生かし、スマート農業などの最先端技術を積極的に取り入れることは、人口減少下にある日本の食料生産において大きなインパクトとなります。
また、高速道路が十字に交差する位置にあり、かつ津波のリスクが少ない十勝・帯広は、インランド・デポ(港から離れた内陸部の物流基地)としての優位性もあります。最新技術を取り入れた高度な農業に災害時にも対応可能な備蓄、加工、物流の機能がつながることで、十勝・帯広は、日本、さらには世界が抱える課題の解決に貢献できる地域になっていけると考えています。
そして何よりも「わが国の食を支える」という責務と矜持(きょうじ)を持ってチャレンジする人たちが増えていくことで、前向き感が生まれ、地域全体の魅力がさらに増していくように思います。
十勝・帯広には食と農の最先端がある。この地を世界から必要とされる、未来に向けた存在感ある地域にしていきたいと思います。
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