‶ビオトープ〟という言葉を耳にしたことはありますか?ドイツ発祥、ギリシア語の「Bio(生物)」と「Topos(場所)」を組み合わせた言葉で、日本語で訳すと「生物の生息空間」を意味します。都市開発などにより失った自然環境を回復、再生させることを指します。昨今の日本は都市化が進み、私たちにとって暮らしやすい環境が整っています。しかし、その過程で水辺環境の破壊が進んでしまい、身近に見られた多くの生きものが姿を消しました。昔は当たり前のようにあった自然と動物が共存する風景を復活させるための活動が行われています。
実は、このビオトープの取り組みが、「パピヨンシャトー」でも行われています。製作に取り組むのは、地域おこし協力隊としてパピヨンシャトーの管理に携わり、任期3年目を迎えた白木雪乃さん。旭山動物園の飼育員だった白木さんは、地域ならではの自然環境に注目し、本来の生態系を壊す恐れがある外来生物の駆除など、自然保護に関わる活動にも積極的に取り組んでいます。
白木さんは「自然保護という言葉は難しく聞こえてしまうが、生態館のビオトープや町に生息する生きものなど、身近なものをきっかけに関心を持ってもらうことが大切」と話します。
白木さんが手がけているビオトープのテーマは「小さな地球」。海水が蒸発し上空で雲となり、雨となって地表に降り、川となり海となる循環をポンプで水をくみ上げることで再現しています。
この循環を成り立たせるためには、水を浄化させることが必要です。地球では水が石や土などの土壌に浸透し、ゆっくりと流れることによって浄化されます。このシステムをビオトープという小さな世界で再現することは非常に難しいこと。白木さんはろ過の機械を導入するのではなく、地球と同様に石や植物を土台に使用することで再現しています。
土台の岩場をよく見ると、隙間には水こけが。これは、自然の景観を崩さずに、石と石をつなぐ‶のり〟の役割を果たします。この工夫は熱帯魚ショップ店員と会話をした際にヒントを得たとのこと。数ミリ石の置き方を変えるだけで水の流れは変化します。流れが良すぎても悪すぎても適切ではありません。形状も大きさも違う石を並べ、試行錯誤を繰り返しながらレイアウトしています。
このビオトープづくりは任期1年目の秋から行っており、現在ビオトープの中にはヤゴやエビなど、当麻町内の水辺の生きものが生息しています。また、土台の植物の大半は寒い環境でも耐えられるよう、野外の日陰で育っているものを採集し、使用しています。
館内での動植物の生育は順調ですが、季節の変化により死んでしまう可能性も。これから迎える冬の厳しい寒さを乗り越えられるかは、実際に春を迎えてみないとわかりません。白木さんは「観察する時期により、変化が生まれます。何度も来館していただいて、進化を見てほしい」と話します。
最終的には、白木さんが手を加えなくても循環できる環境を維持することが目標。「このビオトープが子どもたちにとって、自然環境に興味を持つ入口になってくれたら」と笑顔を見せました。
パピヨンシャトーの今シーズンの営業は10月27日まで。ぜひ当館に足を運んでいただき、成長する「小さな地球」をご覧ください。
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