6月9日ゆめりあで、青少年健全育成のつどいが開催され、150人の町民の方が参加しました。
事前審査で優秀作文に選ばれた児童生徒による「ゆめ、希望、願い」をテーマとした発表(当日欠席者の一部はビデオ発表)を行いました。
◆作文内容
・自分の夢の実現に向けて努力していくこと
・環境問題やSDGsについて
・平和への願い
・人への思いやりについて
・自分ができるボランティア活動
など
◆高校生意見発表
新十津川農業高校3年伊藤心音さんが「野菜の印象が変わる」と題し、野菜の活用拡大活動について発表しました。
◆最優秀賞、優秀賞の結果発表と表彰
作文発表の結果は次のとおりです。
※詳細は本紙2ページをご覧ください。
■講演概要
演題:「伝えるのは命 繋ぐのは命」
講師:旭川市旭山動物園 統括園長 坂東 元氏
○はじめに
今は自分たちが幸せになろうと思って、人のことだけ考えても、もう幸せにはなれない時代で、地球環境や身近な生き物のことをもう一度しっかり考え直さないといけない。
今一度真剣に未来を考え、自分たちの世代で食いつぶしてはいけないと、改めて考えなければならないと思う。
○動物たちはどのように命をつないでいるか
ライオンは、飼育下ではリスクを避けてオス親をメス親、子どもと同居させない場合が多いが、旭山動物園のこだわりとして、子どもがどこでもたくましく生きていけるように、両親と子を一緒に飼育している。
ヒグマに関しては、旭山動物園ではエゾヒグマ館を建設した。これはヒグマがどのような感性や感情を持ち、どのような行動をとるか、またその成長を見守り続けるためである。
また、昨今、特にコロナ下におけるヒグマの行動や旭山動物園内に営巣した野鳥の例から、野生(自然界)で生きることの大変さ、動物の方が人間をよく観察していることを知ってほしい。クマは自分たちが安全を確保した中で飼育していれば、愛くるしい動物である。人間の都合で、ヒグマを過去のオオカミのように絶滅させて良いのか。
○自然との向き合い方~自然を回復軌道に寄せる時代~
我々人間の営みが地球の環境を良くない方向に変えているのは間違いない。ゼロカーボンやCO2削減は実施しなければならない。旭山動物園では、再生エネルギーの電力で電気を賄っている。最終的には地域の廃材などを使った発電所を造ろうと考えている。皆さんには、「ネイチャーポジティブ」と「30by30」という言葉を知ってほしい。今後、世の中で話題になる言葉である。
○持続可能な未来って何だろう?
人類のおごりと一方的な地球の利用から、調和とバランスへ。気候変動対策、環境に優しくということは、たくさんの生命が命をつなぎ続ける未来のために、多様性を守るために必要である。野生ほ乳類、家畜ほ乳類、人類をそれぞれ総重量で表し、いかに人類が地球を占有しているか。このような中で、地球の未来を考えるということは、生半可でない。持続可能とはいうが、人間のわがままに地球はついていけない。
○命との関わり方
(1)大学時代の学びから
大学時代は、特にと殺場での体験から、我々が食用としている牛や豚は死という実感が分からないまま死を迎えているのではなく、本当は生きたいんだなということに気付き、本当の「いただきます」について、深く感じるようになった。自分たちの体は食べ物からつくられている。今、生きているということは、何千、何万もの生きたいと思っている命の上に成り立っていて、自分だけの体ではないこと、その責任感や命の扱い方、自分を粗末にしてはいけないということを学んだ6年間だった。
(2)旭山動物園での経験から
動物は人間に対して、一定の許容ラインを持っている。オオカミの治療を例に出すと、病気を治すことを絶対善と考えていて、相手の気持ちを考えていなかったことに気付き、それ以降、生き物と関わるとはどういうことなのかを考えるようになった。
○命をつなぐということ
オランウータンの生態的特徴とペアリングの難しさ、子育てのことについて、旭山動物園での実例を紹介すると、大人のペアリングが成功したのは通常の飼育環境では難しいことで、その成功の一因として、立体的な施設を造りそこで飼育したからである。また、出産から子育てを通して、母親の成長する姿、さらに兄が妹の誕生の時、産後の処理を母と一緒にしている姿を見て、絆(きずな)をとても感じた。こうして、命の誕生の継続が未来につながっている。
○命を終わらせてくれる仕組みの中で、命があふれているのが「自然」
「命を大切に」と言うが、死を大切にできなかったら生きることを大切にできないと思う。
老齢で内臓疾患のあったホッキョクグマが最後を迎えた時、決して安直ではなく、その動物の威厳や尊厳を考えた中で、安楽死を選択肢に入れた治療方針を立てた。このホッキョクグマは、最終的には理想的な自然死を迎えた。
「生まれて死ぬから命」「死は忘れ去るものではなく、存在が消えて心の中で生き始めるもの」このことが大切である。
昨年、駆除したヒグマやエゾシカのほとんどは産業廃棄物となった。「命は大切に」と言っていながら、命をゴミにする生き物は人間しかいない。このことが心に響かなければ、未来は変わっていかないと思う。命は永遠ではないので、死を大切にすることが、生きることを大切にすることにつながる。
○「麻酔」~命を預かる~
キリンの爪を切る治療のために麻酔をした時の様子から、日々の何気ない仕草などを常に注視しないと、最後まで命を預かることはできない。
○終わりに
都合のいいところのつまみ食いでは、本当の意味での命の大切さは伝わらない。我々は、これからどうやって自然と向き合うのか真剣に考え、一人一人が一つのことにこだわって、何か小さな行動変容ができれば未来は絶対いい方向に変えられる。それは、今の子どもたちにバトンタッチする未来なので、しっかりとバトンタッチできる働きをしたい。
問合せ:教育委員会社会教育グループ
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