全国で町村初となる手話条例を制定してから今年で10年が経過しました。
福祉のまち、手話のまちである新得町はこの10年で何が変わり、今後どのような進化をしていくのでしょうか。
今号は手話を特集します。
◆新得町の手話
昭和28年、藤川マキヱさん・田中皎一さんの2人の思いであった、「義務教育だけで社会に送り出すのではなく、義務教育が終わった後に技術を身に付ける」ことを目的とした、ろう者のための障がい者授産施設わかふじ寮を創設したことから、新得の手話の歴史が始まりました。
当時は社会福祉事業法(現社会福祉法)が施行されたばかりであり、民間社会福祉事業者にとって授産施設の経営は厳しいものがありましたが、少しづつ基礎を固めていきました。
◆町民から広がる手話
新得町民に手話が広まり始めたきっかけは、昭和51年に新得で開催された「第20回全道ろうあ者福祉大会」でした。全道各地から集まった約400人の聴覚障がい者を手話で迎え入れ、新得で楽しい思い出を作ってもらおうと、手話講習会が開催されたことがきっかけで、「新得手話の会」を結成しました。
藤川さん・田中さんの福祉の意識が町全体へしっかりと根付いていたと感じられる出来事でした。
◆条例制定に向けて
平成25年8月31日から2日間にわたり「第54回全道ろうあ者大会」が、昭和51年以来37年ぶりに新得で開催されました。
開会あいさつで十勝聴力障害者協会の川口豊会長が「条例制定の動きが全道・全国に広まってほしい」と述べたことがきっかけとなり、北海道ろうあ連盟の蠣崎日出雄(かきざきひでお)理事長が浜田町長へ条例の制定を要請し、福祉のまちづくりを進めている新得町として、条例制定に向けて具体的に検討をすることになりました。
◆検討、そして制定へ
平成25年11月8日、町内で障がい者を支援する団体や手話サークル、障がい者福祉施設の代表者、聴覚障がい者などにより、手話に関する基本条例の研究会(桑原隆俊会長)が発足し、地域に根ざした条例を作り上げるため、議論を重ねました。
条例の意図としては、手話とは、「手指の動き」や「表情」などを使い意見を表現する、ろう者の大切なコミュニケーション方法であり、聞こえる人が用いる日本語などと同じく、一つの「言語」であることをみんなが理解する必要があり、「手話は言語である」という意味合いが強く込められています。
平成26年3月5日の定例町議会にて、北海道ろうあ連盟や手話条例研究会が傍聴席で見守る中、手話での条例提案が行われ、「手話に関する基本条例」は全会一致の可決となりました。
◆広がる手話の「輪」
町では条例制定をきっかけに、様々な取り組みを行ってきました。手話普及を目的として開催されたイベント「新得町手話の輪フェスタ」が平成27年1月24日に開催され、多くの町民の参加がありました。
その他の取り組みとして、手話の本の発行、手話推進員の配置、手話ブルーの誕生など、手話普及に向けて様々なことを行ってきました。手話のまち新得で働く役場職員自らが手話の定着に向け、手話での朝礼や、手話講座なども行っています。
町民の活動も活発です。
昭和51年開催の、全道ろうあ者福祉大会の開催を機に結成された「新得手話の会」は、毎週木曜日の夜に町公民館で講習会が開かれており、ろう者の方と手話で話す実践的な講習を行っています。
手話コーラスは平成15年に結成され、41名の会員が手話で歌を学んでおります。
各会の活動はろう者との交流に留まらず、なかよし学習塾や各種イベントで手話の歌を披露するなど、子供から大人まで幅広い町民への手話普及に向けて取り組みを進めています。
▽新得手話の会
会員数:9名
活動日:毎週木曜日
活動時間:19時〜21時
▽手話コーラス
会員数:41名
活動日:毎週水曜日
活動時間:19時〜21時
◆いくつ知ってる?まちのとりくみ
・日常会話で使う手話をイラストで解説している「手話ポスター」は平成27年に発行しました。
・毎月の広報しんとくでは主に役場職員がモデルとなり、手話を解説しています。今号で110回を迎えました。
・町民への手話普及を目的として、手話普及推進員を現在までに計2名配置していました。(現在は欠員)
・平成31年に手話の本が発行されました。あいさつや日常生活で使用する手話が収録されています。(現在は在庫なし。来年度重版予定。)
・皆さんお馴染みの手話ブルーは平成31年に誕生しました。その後、福祉関係をはじめとした、様々なイベントに参加しています。
<この記事についてアンケートにご協力ください。>