自然が多く、約8千種の生き物が生息している札幌。
今回の特集を通して、私たちの暮らしと生き物とのつながりを知り、一人一人にできることを考えてみませんか。
■生物多様性とは
地球上では、さまざまな特徴を持った生き物が、山や川、海や街などの環境の中で豊かな生態系をつくっています。私たち人間を含むいろいろな動物や植物などが、ちょうど良いバランスで関わり合いながら暮らしていることを、生物多様性といいます。
■生物多様性と私たちの暮らし
きれいな空気やおいしい水、食べ物や衣服など、普段当たり前にあると思っている物の多くは、生物多様性が保たれていることで得られる自然の恵みです。私たちの暮らしは生物多様性によって支えられています。
▽例えば、牛乳ができるまで…
土、微生物、ミミズ、アリ→牧草、太陽、水→牛→牛乳
牛乳ができるまでには、さまざまな生き物や自然の恵みが関わっています。どれか一つでも失われると、牛乳ができなくなってしまう可能性も。地球上にいる全ての生き物がそれぞれ役割を持って生きていて、私たちの暮らしが支えられています。
■生物多様性の今
主に人間の活動が原因で、生物多様性は急速に失われつつあります。地球上では、1年間に約4万種もの生き物が絶滅しているといわれていて、これまでにない速さで絶滅が進んでいます。今ある札幌の自然と生き物を守るために、一人一人ができることを考え、取り組む必要があります。
■生物多様性に影響を与える外来生物
元々その地域にはいなかったのに、人間によって他の地域から持ち込まれてすんでいる生き物のことを外来生物といいます。札幌では457種の外来生物が確認されており、生態系に影響を及ぼすことが心配されています。
▽札幌にすむ外来生物の例
・アライグマ
・アズマヒキガエル
・ウチダザリガニ
■ヒグマやエゾシカも生物多様性を支える一員
近年よく市街地に出没して問題になるヒグマやエゾシカも、元々札幌にすむ在来生物であり、生物多様性を支えています。それぞれが暮らす場所のすみ分けを行い、上手に共生することが大切です。
■札幌からいなくなってしまった生き物も
タンチョウやシマフクロウなどの生き物は、今はもう市内では見られなくなってしまいました。また、121種の生き物が市の絶滅危惧種に選定されています。これ以上生き物が減ってしまわないように、生き物がすむ環境を守っていく必要があります。
■一人一人にできることを考えてみよう
生物多様性を守るために、私たちができることは何でしょうか。
ここでは、いくつかの例を紹介します。
▽生き物や自然との触れ合いを増やしてみよう
まずは生き物や自然に興味を持ってみることが大切。
近所の公園を歩いて季節の変化を意識したり、生き物の姿を探したりすると、身の回りに多くの生き物がいることを改めて実感できます。
・さらに調べてみよう
見つけた生き物が私たちの暮らしにどう関係しているのか調べてみると、生き物の大切さへの理解が深まります。
▽食材は買い過ぎないようにしよう
食材は使い切れる量だけ買うようにして、料理の作り過ぎや食べ残しに気を付けましょう。生き物の命を無駄にしないことが、自然を守ることにつながります。
・さらに地元の物を食べよう
地域で取れた食材をその地域内で食べる地産地消を心がけることで、食材を運ぶ乗り物に使われる燃料が減り、二酸化炭素の排出を抑えられて、環境への負荷を減らすことにつながります。
▽水などの資源を大切にしよう
生き物の生活に欠かせない水は、自然の恵みがもたらす、限りあるものです。無駄遣いしないように、水の出しっ放しなどに気を付けて生活してみましょう。
▽ペットは最後まで責任を持って飼おう
ペットの中には、元々市内に生息していない生き物もいます。野外に放すと、自然環境を壊してしまう恐れもあるので、ペットは必ず最後まで面倒を見ましょう。
▽野外で出たごみは持ち帰ろう
何げなく捨てたごみを野生動物が飲み込んで、けがをしてしまったり死んでしまったりすることがあります。ごみは決して野外に放置せずに、持ち帰るようにしましょう。
・さらにごみを減らす工夫をしてみよう
簡易包装や詰め替え用の物を購入すること、不用品を捨てずに売ったり譲ったりすることなどを心がけるのも、自然環境を守る取り組みです。
▽野生の動物に餌を与えないようにしよう
野生の動物は人間に餌を与えられることで、自分で餌を手に入れる力が弱まってしまう可能性があります。また、十分過ぎる量の餌があると、繁殖力が高まり生態系のバランスが崩れてしまう恐れも。野生の動物を見かけても、そっと見守ることが大切です。
■両生類・爬虫(はちゅう)類研究家の方に聞きました
両爬(は)の生態系をかんガエル・札幌市南区チーム徳田(とくだ)さん
▽外来生物の影響から札幌の自然を守りたい
私たちは、道外から持ち込まれた外来生物のアズマヒキガエルがこれ以上増えないように、見回り調査や捕獲などの活動をしています。アズマヒキガエルが増えてしまうと、元々すんでいた生き物の生活に影響を与えてしまう恐れがあります。また、アズマヒキガエルを餌にしている外来生物のアライグマの増加にもつながり、生態系のバランスが崩れたり、人間が育てる農作物への被害が増えたりする可能性があります。
在来生物を守り、生物多様性を維持していくためにこれからも活動を続けていきたいです。
▽生物多様性を次の世代に
このままだといつの日か生物多様性が失われ、私たち人間の生活も脅かされてしまうかもしれないということを考えてみてほしいなと思います。今はお店に当たり前のように並んでいる食材も、自分の子や孫の世代には食べられなくなってしまうかもしれません。生物多様性によって、私たちの暮らしが豊かになっているということを思いながら、一人一人にできることを始めてみるのが大切なのではないでしょうか。
詳細:環境共生担当課
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