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子育てコラム

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北海道東神楽町

◆親性というもの
◇親性というもの
「父親は子どもに厳しさを母親は子どもに優しさを」社会的性役割(ジェンダー)からくるこのような両性の親役割の捉え方は、社会学的にも心理学的にも、そして子どもの視点から見ても意味のないものと考えられるようになってきました。子どもが生まれ、その子どもの親になっていくプロセスは父親にとっても母親にとっても同様に「育児に関与する」ことで育つ(培われる)ものといえます。
また「親はこうあるべき」というのも幻想で、その人自身が親役割を発揮するベースには「個性」があって良くて、その個性を抑えて「あるべき姿」を求めてしまうと、自分で自分を苦しめて不自由になり、結果として子育てをゆがめることになります。「私らしく」目の前の子どもとの関係を大切にしながら「共に育ちあう」ことで自分自身の個性も活かせるような子育てができるように思います。
子どもの視点から見て「自分を大切にしてくれる」「自分を愛してくれる」存在全てが「親性」を持つ存在ということができます。両親がそろっていなければだめ、ということでもなく「保育者」や「親族」、「地域の人々」も含めて、子どもの育ちを支える大人とたくさん出会えることが、子どもの健やかな成長・発達にとって重要なのです。

◇子育て支援の事例から
私の乳幼児健診での相談事例を紹介します。その方は保育士として7年程の実務歴があり、乳児保育の経験も豊富な方でしたが、出産後まもなくうつ状態になり、心理相談を希望されました。
結婚後すぐに妊娠し、専業主婦になり、夫や姑から「あなたは保育者だったから家事・育児も任せられる」といわれ、自分でもそのように思っておられました。しかし、いざ出産してみると育児だけでも精一杯で、家事に手がかけられず、自分が思っていた以上にうまくいきません。それを夫にも姑にも相談できず、自分ひとりでその困難感を背負った結果、自信を喪失し、うつ状態に至ったことが、相談場面で語られました。
私がその方にお話ししたのは「お母さんは経験のある保育者ではあったかもしれませんが、自分の子育ては初めてですね。だから『初心者』でいいのですよ」ということです。「『初心者』であれば子育ても家事もひとりでこなすのが大変なのは当たり前です。子育ては両親が共に行うことが良いので、良いお父さんになるためにも積極的に育児に関わって欲しいし、必要な時には姑さんを頼ってもいいのです」とお話しした後で、「私『初心者』で良かったんですね」ほっとした様に涙を浮かべていたその方の姿が思い出されます。

◆杉本太平(すぎもとたいへい)プロフィール
宇都宮共和大学子ども生活学部教授。資格は認定心理士、人間関係士。
東京都文京区教育センターの心理相談員や埼玉県下で乳幼児健診・乳幼児発達支援・子育て支援などに従事し、現在大学において保育者養成に務めている。その他、人間関係・HRST研究会会長として関係学理論を背景に独自に開発した地域住民や対人支援の専門職者を対象に心理劇を用いたアクティブラーニング(HRST)の研修会を主催し、子育て支援者の養成を中心に各種の講演活動、子育て・人間関係に関する出版物の発行を行っている。

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