川を守り、山と海をつなぐ
◆令和5年度「環境保全研修会」開催
河川流域の環境保全に対する知識養成と意識啓発を目的とする「環境保全研修会」を、12月21日に、生涯学習センターあすぱるで開催しました。
この研修会は、産業環境を守るための情報交換の場として、平成15年4月に本町と中標津町の1次産業関連団体によって設立された「産業環境に関する懇談会」との共同開催で、町内外の関係団体から計35人が参加しました。
山口町長は開会挨拶で「原材料・燃料価格高騰や、酪農業は生産抑制、水産業は資源低迷により1次産業が打撃を受ける中、陸と海が互いに尊重し合い、生産環境を保全していくことは、将来にわたる地域の発展のための重要な取り組みである」と述べました。
次に基調講演には、今年度の流域草地緩衝帯地質改良事業で技術アドバイザーを務めていただいた岩見沢農業高等学校教諭の佐々木章晴氏をお招きし「酪農と水産業の両立に向けて」と題し、根室管内の農地と河川の水質に関する講話をいただきました。
閉会挨拶では標津漁業協同組合織田専務理事が「流域環境の保全のためには、標津町、中標津町の各産業の関係者が危機感と当事者意識を持ち、主体的に活動を推進していくことが不可欠である」と挨拶し、環境保全研修会が終了しました。
▽基調講演要旨「酪農と水産業の両立に向けて」
北海道根釧地方は冷涼な気候の丘陵地で、大規模な酪農と沿岸漁業が基幹産業となっている。しかし、農地開発や化学肥料の投入によって流域の森林率が低下している。
農地に投入された硝酸態窒素が河川に流出する過程で、土壌のアルミニウムが溶け出していると推測される。河川のアルミニウム濃度の上昇はサケの稚魚に影響を及ぼしている可能性がある。
また、化学肥料の使用が土壌の酸性度を上げ、イネ科牧草を減少させて生産効率が低下するという問題もある。
この対策として、炭酸カルシウムを散布し土壌の交換性カルシウム量を増加させることで、植生が改善されることが実験で明らかになった。
持続可能な土地利用のためには、草地面積の削減や窒素投入量の抑制、土壌の交換性カルシウム量増加が効果的であるが、乳量や牧草の生産量が低下してしまう。
こういった対策を実施するためには、地域住民や関係団体、行政機関などが協力し、どれだけの生産量の低下が許容できるのか、流域ごとに合意形成をしながら進めていかなければならない。
水産課水産担当
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