「手話は言語」という認識をもっていますか。
言語は、コミュニケーションを取る手段として、誰にとっても欠かせないものです。手話も同じく言語であり、聴覚障がいのある人にとって当たり前に必要なものです。
市では、手話が言語であるという認識を広く市民に普及し、手話の使いやすい社会の実現を目的として「江別市手話言語条例」を制定し、5年が経過しました。
今回は、手話に関わる方々からお話を伺いました。
■聴覚障がいとは
音が聞こえない、聞こえにくいことを指します。障がいの程度は人それぞれで、全く聞こえない人や、大きな声で話せば聞こえる人もいます。生まれた時から聞こえない人と後天的に障がいを持った人では、手話への理解も異なります。
▽ろう者
音が聞こえない人のうち、手話を使う人のことです。
▽難聴者
音が聞こえにくい人のことです。手話のほか、補聴器や口話(こうわ)話を使用した音声会話、筆談のやり取りなど、コミュニケーションはさまざまです。
▽中途失聴者
音声言語を覚えた後で、音が聞こえなくなった人のことです。コミュニケーションの方法は、難聴者と同様です。
■手話以外のコミュニケーションはさまざまです
▽筆談
紙に書いて伝えます。音声を文字に起こすアプリもあります。
▽音声で会話
補聴器の利用や明確な話し方で、音声での会話ができる人もいます。
▽空文字・指文字
空文字は空中に文字を書いて表し、指文字は指で50音の形を表します。
■手話で話ができると、うれしい
幼い頃に聴覚障がいになったという村山清貴さん。現在は、市内で聴覚障がいのある人が活動する江別聴力障害者協会の会長を務めています。
聴覚障がいがあり、手話を使う暮らしについて、江別市専任手話通訳者に通訳してもらいながらお話を伺いました。
・江別聴力障害者協会 会長 村山清貴(むらやまきよたか)さん
・村山さん夫婦と一緒に暮らす孫の敦士(あつし)くん。
手話を使って、習い事のバレーボールの話をしていました。
▽どのように手話を覚えましたか
私は函館に近い田舎の町で生まれ、小学校からは函館の聾(ろう)学校に入学し、寮生活をしていました。当時は、相手の口の形や動きを見て声に出す口話教育が進められており、手話を使うことが禁止されていました。小学1年生で聾学校に通っていても、教科書をもらえず、発音の練習ばかりしていたのです。教科書の勉強が始まったのは小学4年生の頃でした。
当時、学校では手話を使うと怒られたため、寮での暮らしの中で手話を覚えました。寮で暮らす上級生たちが手話を使っていたので、目で見て、自然と手話を覚えました。
学校で手話を使えないことはつらかったのですが、寮では手話で話したり、遊んだりできて楽しかったです。もちろん、現在は手話が言語であると認められ、聾学校でも手話で授業が行われています。
▽生活の中で困っている事はありますか
目が見えない人や肢体不自由な人は見た目で分かることもありますが、耳が聞こえない人の外見は聞こえる人と変わりません。道を聞かれた時に答えられずトラブルになったことがあります。「見えない障がい」だと理解してもらえず悔しい思いをすることが多いです。多くの方に、耳の聞こえない人が身近にいることを知ってもらいたいです。
他には、火事や地震などの災害時に不便で、不安に感じます。6年前の北海道胆振東部地震で、市内が停電になった時のことです。聞こえる人同士であれば、暗い部屋の中でも話をすることができますが、手話は相手を目で見て話すため、明かりがなくては話すことができません。その時に、ヘッドライトが役に立ったので、今ではすぐ取り出せるようにしています。
▽手話言語条例が制定され暮らしは変わりましたか
残念ながら、特に暮らしで大きく変わったと感じたことはありません。条例の制定後、コロナ禍の影響で、思うように活動ができなかったという点も挙げられます。
しかし、最近うれしい出来事がありました。コンビニで買い物をした時に、店員さんが手話で「ありがとう」と伝えてくれたのです。たった一言であっても、手話で伝えてくれたのがとてもうれしかったです。手話は言語で、私たちろう者にとっては母語です。「ありがとう」の手話だけでも知っている人がもっと増えてほしいです。
私は、市の手話講習会で講師もしています。手話で話ができると楽しいものです。手話に興味がある方は受講してみませんか。
■耳が聞こえない人の抱えている問題とは
地域に暮らす聴覚障がいのある人が抱えている問題を一緒に考え、地域や行政に働きかける活動をしている北海道手話通訳問題研究会(略:通研)江別班。月1回の定例会を行い、防災訓練にろう者と一緒に参加したり、災害や手話に関わる研修会を企画したりしています。事務局の木山泰恵子さんにお話を伺いました。
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耳の聞こえない人の抱えている問題の中で、災害時の対応は特に重要です。東日本大震災の時、聞こえない人の死亡率は、聞こえる人の2倍でした。災害時、避難指示が聞こえないなど、わからない情報がたくさんあります。市民の皆さんには、聞こえない人が身近に暮らしていることを知り、音声情報を「目で見る情報」として伝えられることを知ってほしいです。手話以外にも筆談や身ぶり、音声を文字に変換してくれるアプリ、スマホの文字入力など、コミュニケーションを取る手段はいろいろあります。何か起こった時「ここに聞こえない人がいたら?」と考えてみてください。
手話は言語であり、耳が聞こえない人にとって自然に覚えられる言葉「母語」といわれます。そのため、ろう者と聞こえる人をつなぐ手話通訳者がいます。市では手話通訳者の派遣を行っており、多くの人が集まるイベントはもちろん、教育や命に関わる医療現場への派遣も行っています。手話通訳者は、ろう者の生活にとって欠かせない存在です。まだ「ボランティア」と勘違いされることもありますが、手話通訳者は市の制度の中で、仕事として派遣されています。手話が言語だという理解がさらに広まることで、手話通訳者の重要性も広まることを望んでいます。
詳細:障がい福祉課
【電話】381-1031
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